明治一二年(一八七九)頃、加藤弘之によって造られた訳語だと言われる。その「人権新説」には数多くの用例が見られ、社会に大きな反響をまき起した書物であるところから、早くに一般化したと思われる。
生活に必要な資源(食物、生活空間など)に関して共通の要求をもつ生物の間でみられる相互作用をいう。現代の生物学では、単に競争competitionということが多い。同種個体間の競争を種内競争、異種間の場合を種間競争という。生存競争というと「弱肉強食」というイメージを思い浮かべる人が多いが、このような食うものと食われるものとの間の相互作用は含まれない。ただし、生存競争あるいは「生存闘争」ということばは、ダーウィンの『種の起原』にあるstruggle for existenceの訳であり、本来そこでは、同種・他種の生物をはじめ、物理化学的環境条件までも含めた、さまざまな生活条件と生物との相互作用の全体を意味するものとして使われていた。つまり、ダーウィンは、生物が高い増殖能力をもちながら、実際には、その数は低く、ほぼ一定に保たれていることから、生物の数の増加を抑制する作用が自然界にはあるに違いないと考え、その作用をもたらす原因として生存競争を想定したのである。同時にダーウィンは、生物の変異性に着目し、環境条件により適応した変異が生存競争の結果として保存され、徐々に生物は変わっていくことにより、新しい種が形成されるという、有名な自然選択説を提唱するに至るのである。彼自身は、生存競争の考えをマルサスの『人口論』をヒントに着想したとしているが、現在では、当時の社会に普及していた、自由競争による発展という通念の反映であるとする見方が有力である。生存競争の概念は、その後人間社会に再移入され、戦争、人種や階級の差別を合理化する、安易な社会ダーウィニズムを生み出した。これに対しクロポトキンは、『相互扶助論』のなかで、自然界では生物はむしろ助け合うことが普通であると主張し、社会ダーウィニズムを批判している。最近、生物学の一分野として遺伝子の利己性と競争を中心概念とする社会生物学が盛んになってきているが、ヨーロッパやアメリカではふたたび社会的な問題として論議が闘わされているようである。
[上田哲行]
struggle for existence
生存闘争とも。C.ダーウィン(1859)は,種のなかの個体変異から亜種・変種が由来してくる機構を生存競争に求めた。生存競争の三つの要素として,1)生物と自然条件との競争,2)同種内の個体間の競争,3)異種間(元の種と変種)の個体の競争を挙げている。ダーウィンは,このうち最も重要なものは2)であるとしている。今日では,新しい種の形成につながる種の内部矛盾を構成するのは,3)の変種間(またはディーム間)の競争にあるとの見方が有力。個体間の競争の概念は,ダーウィンがマルサス(1798)からの影響を受けて導入したものとされる。個体間の競争概念を社会一般に普遍化させた思想を社会ダーウィニズムという。
執筆者:小寺 春人
出典 平凡社「最新 地学事典」最新 地学事典について 情報
出典 四字熟語を知る辞典四字熟語を知る辞典について 情報
…雌雄二形の一部は,狭義の自然淘汰の結果として説明できることがその後明らかになって,一時は雌雄淘汰という概念は不必要だとされたこともあったが,今日では再びその必要性が認められている。 ダーウィンはその著書の中で,生存闘争(生存競争)struggle for existence,最適者生存survival of the fittestという言葉を自然淘汰とほとんど同じ意味で使った。これは不幸なことで,さまざまな誤解を生じた。…
※「生存競争」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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