浴むす(読み)アムス

デジタル大辞泉 「浴むす」の意味・読み・例文・類語

あむ・す【浴むす】

[動サ四]湯や水を浴びせる。
「さし鍋に湯沸かせ子ども…狐に―・さむ」〈・三八二四〉
[動サ下二]に同じ。
「湯わかして、―・せ奉らんとて」〈宇治拾遺・一三〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「浴むす」の意味・読み・例文・類語

あむ・す【浴】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 サ行四段活用 〙 湯水などをからだにかける。あびせる。あぶす。
    1. [初出の実例]「さし鍋に湯沸かせ子ども櫟津(いちひつ)の檜橋より来む狐(きつね)に安牟佐(アムサ)む」(出典:万葉集(8C後)一六・三八二四)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙 [ 一 ]に同じ。
    1. [初出の実例]「御湯など召して、姫君にもあむせ奉りて」(出典:夜の寝覚(1045‐68頃)二)

浴むすの語誌

( 1 )「あむす」から「あぶす」→「あびす」と語形変化したが、第一の変化はmとbとの子音交替によるもので、「あむ」→「あぶ」の変化と軌を一にし、変化の時期は平安時代末期から鎌倉時代と思われる。第二の変化は「あぶ」の上一段化によって、語幹が「あび」で安定したことに伴うもので、室町末期から江戸時代に起こった。
( 2 )四段活用のほうが古いが、「観智院本名義抄」の「沐浴(アムス)」、「三宝絵‐下」の「大に湯をわかしてあまねく僧にあむす」、「名語記‐八」の「湯水をあむす、如何」などは、[ 一 ][ 二 ]かの判別のできない例である。


あぶ・せる【浴】

  1. 〘 他動詞 サ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]あぶ・す 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙
  2. 湯水などをからだにかける。あむす。あびせる。
    1. [初出の実例]「灌仏は〈略〉仏に水をあぶせ奉る也」(出典:年中行事歌合(1366)一三番)
  3. 責任を他に負わせる。負担をかける。あびせる。
    1. [初出の実例]「善次郎は兄にあぶせてかねぬすみ」(出典:浄瑠璃・心中二枚絵草紙(1706頃)下)

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