漁場入札制(読み)ぎょじょうにゅうさつせい

改訂新版 世界大百科事典 「漁場入札制」の意味・わかりやすい解説

漁場入札制 (ぎょじょうにゅうさつせい)

漁場入札で決める制度であるが,これには二つの形態があった。第1は漁場賃貸の場合に,その賃貸料と借主すなわち漁業経営者が競争入札で決定される形態である。漁場占有利用権者が漁業経営者でない場合に,江戸時代でも,明治以降でもよくみられ,とくに大型定置網漁場などで広く知られている。第2は明治初年の漁場制度の一部にみられた形態である。岩手県では1875年(明治8)以降10年代にかけて,場所を固定する排他独占性の強い主要漁場の占有利用権者を決定するとき,その漁場の税額競争入札させ,落札者にその漁場の占有利用権を与える制度を採用した。その結果,一時は盛岡方面の士族が漁場占有利用権者になる例が少なくなかったが,1880年以降は前年期中の税額で出願するのであれば,優先的に地元の村受漁場を育成する方向に変わった。岩手県のような大がかりな入札制は他県に例をみないが,河川漁場の場合では同様の入札例がみられた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android