売買において、複数の契約希望者に契約条件を提示させ、もっとも有利な条件を提示した者と契約すること。日本では、競争入札は、公共工事や政府調達について、官(政府や地方公共団体など)という一つの買い手が複数の契約希望者(複数の売り手)のなかから、契約者を選ぶ際に使われる場合が多い。だれでも入札に参加できる「一般競争入札」と、入札に参加する者を過去の実績や技術力などであらかじめ絞り込む「指名競争入札」がある。競争入札を行わず、特定の者と契約することは随意契約とよぶ。一般競争入札は選定過程が透明で談合防止効果があり、競争によるコスト削減効果が大きいが、過当競争となり、品質低下を招くおそれがある。指名競争入札は過当競争を抑え、入札審査や監督業務を軽減できるが、指名過程が不透明で談合を誘発しやすい。随意契約は災害時などに迅速に対応できるほか、特許保有者など専門性の高い者との契約に向いているが、競争原理が働かず汚職が起きやすい。競争入札で、契約希望者が1者だけの場合を「1者入札」とよぶ。一般競争入札では1者入札を認める場合もあるが、指名競争入札で1者入札となった場合は入札をやり直す。
国や地方公共団体との契約は、明治以降、会計法や地方自治法で、一般競争入札が原則と定められているが、悪質な業者を排除する目的で、例外として認められた指名競争入札が第二次世界大戦前から広く行われ、談合の温床となってきた。しかし1993年(平成5)のゼネコン汚職を機に、1994年から大規模公共工事について一般競争入札を導入。さらに2005年(平成17)の鋼鉄製橋梁(きょうりょう)工事談合事件や2006年の福島・和歌山・宮崎県知事による官製談合事件を機に、国土交通省は直轄事業について広く一般競争入札を義務づけた。また、総務省は2006年、都道府県や政令指定都市に随意契約を見直すよう通達した。政府調達では、日本企業と外国企業が対等に競争できるように定めた世界貿易機関(WTO)の政府調達協定に基づき、1件あたりの調達額が同協定で定めた基準額を上回る場合、競争入札を実施しなければならない。基準額は2年ごとに、外国為替相場の変動にあわせて見直すことになっている。
なお国や地方公共団体が提供する公共サービスを、官と民の競争入札で選ぶことを「市場化テスト」とよぶ。これには、公共サービスの官独占に風穴を開け、利用料金の低下やサービスの質的向上を促す効果が期待されている。
[矢野 武 2015年2月17日]
…老舗・名門の業者はこの特命受注の比率が高く,一般に採算もよい。入札には,指名入札と競争入札とがある。入札業者を発注者が何社か指名するかオープンにするかの違いであり,会計法では原則として競争入札にするとなっているが,実際には,ほとんどの官公庁工事は指名入札になっている。…
…建築工事を行うにあたって施主(建築主)と施工者との間でかわされる商的取決め。建築工事における施工者の決定方法としては,特命,見積合せ,競争入札の三つがある。信頼のおける施工者をあらかじめ選んでおき,他の建設業者と競争させることなく決定する方法が特命で,いくつかの建設業者から見積書を取り寄せ,その内容を詳しく検討して施工者を決定する方法を見積合せという。…
…せり売りには買手が値をせり上げていく〈せり上げ〉と,売手が値をせり下げていく〈せり下げ〉があるが,せり下げはオランダ,ベルギーなど一部で行われたところから,別名オランダぜりDutch auctionと呼ばれるように,特殊な物品,特殊なケースに限られる(街頭のバナナ売りなど)。せりの一般的な形態はせり売りだが,買手が1人で,2人以上の売手が競争して最も安値を付けた売手のものを買うのを〈せり買い〉といい,建築工事の請負や官公庁の調度品入札などにみられる競争入札(入札)はせり買いの一種である。この両者の方法を取り入れ,多数の売手と多数の買手が互いに有利な値段を求めてせり合って値段を決める方式を競売買(きようばいばい)と呼び,商品取引所での中心的な売買仕法である。…
※「競争入札」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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