近世以降,灘目(なだめ)地方で発展した都市向けの良質な酒。伊丹・池田などの都市酒造業を凌駕して急速に発展した灘酒造家の多くは,在方商人として出発し,多様な商業活動の後に成長して専業化。灘五郷(今津・西宮・魚崎・御影・西の各郷)の経営規模は,天保年間には1000石以上138軒,5000石以上7軒,1万石以上3軒を数え,化政期には江戸下り酒の7割を灘酒で占めた。灘酒造業は精米工程において,従来の足踏精米から六甲山系からの急流を利用した水車精米へいち早く転換することによって労働力を節約し,量産化に成功した。仕込工程はおもに丹波地方出身の杜氏(とうじ)を中心とする出稼ぎ集団によって形成されていた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…足踏式では玄米の10%をぬかとして取り去った90%精白米を得るのが限度であったが,水車式精米機の出現で,80%以下まで精白することが可能となった。これにより灘酒の品質は向上し,1815年(文化12),生産高で伊丹酒を抜いた。宮水(みやみず)と呼ばれる鉄分の少ない西宮の湧水と良質な播州米(ばんしゆうまい)を原料にし,現在の兵庫県多紀郡篠山(ささやま)町を中心とする酒造出稼ぎの農民集団〈丹波杜氏(たんばとうじ)〉の技術と労働力に恵まれ,灘酒は以後現在まで生産高において第1位を保っている。…
※「灘酒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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