日本大百科全書(ニッポニカ) 「灰かづき姫」の意味・わかりやすい解説
灰かづき姫
はいかづきひめ
昔話。「シンデレラ」型の継子(ままこ)話の一つ。「シンデレラ」の主人公の継娘が、イギリスでシンデレラ、フランスでサンドリヨンとよばれているのは「灰っ子」という意味で、継娘が灰まみれになるような、虐げられた暮らしをしていることによる。日本では「シンデレラ」型の一例「姥皮(うばかわ)」にこの趣向がみえている。姥皮で老女に身をやつした継娘が火たき女として住み込む話で、物語草子の『うばかは』『花世の姫』それに『鉢かづき』などもその類話である。継子が「灰っ子」であることを強調した昔話には「灰坊(はいぼう)」がある。継母にいじめられる若者が家を出て、長者の家の火たき男になる。芝居のとき、長者の娘が若者を見そめ、恋の病になる。占者によって病気の原因がわかり、若者は娘と結婚する。若者を継子とはいわない類話も多いが、若者を灰坊とよぶなど、全体の形式は「シンデレラ」の男性版である。「シンデレラ」型の昔話群のなかから変成したものであろう。難題婿「播磨糸長(はりまいとなが)」と結び付いた類話も広く分布しており、そのような形式で語り物として語られた時代もあるらしい。
[小島瓔]