趣向(読み)しゅこう

精選版 日本国語大辞典「趣向」の解説

しゅ‐こう ‥カウ【趣向】

〘名〙
① (━する) めざすことに向かって行くこと。目的に向かって進むこと。
※正法眼蔵(1231‐53)空華「趣真如亦是邪。真如を背するこれ邪なり、真如に向するこれ邪なり」 〔新唐書‐陳子昂伝〕
② おもむき。趣意。こころもち。
※評判記・色道大鏡(1678)二「かれをたのみ是にいはせて、漸首尾せさしめ逢そむるなどこそ、すぐれたる恋の趣向(シュカウ)ならめ」 〔鄭谷‐贈尚願上人
③ (━する) 味わいやおもしろみが出るようくふうすること。また、そのくふう。意匠。
※太平記(14C後)一「句の優美・遠長なる体製のみ有て、の趣向(シュカウ)落著の所を知り難し」
※浄瑠璃・仮名手本忠臣蔵(1748)七「今晩は彼由良大尽の御趣向(シュカウ)で名有る色達を掴込(つかみこみ)
俳諧で、句の構想。句案。
※俳諧・貝おほひ(1672)二番「とかく左のこん袋は、趣向(シュカウ)もよき分別袋とみえたれば」
歌舞伎で、構想上のくふう。
※役者論語(1776)佐渡島日記「近年は向ひに出すなんど聞ゆ趣向(シュカウ)を、又こちらにもまけじと急に稽古などして、張あひ仕ける」

し‐こう ‥カウ【趣向】

〘名〙 「しゅこう(趣向)」の変化した語。
※滑稽本・八笑人(1820‐49)三「御趣向(シカウ)かんしんかんしん」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉「趣向」の解説

しゅ‐こう〔‐カウ〕【趣向】

[名](スル)
おもむき。意向。趣意。「いつもとは趣向の異なるパーティー」
味わいやおもしろみが出るように工夫すること。また、その工夫。「趣向らす」
「夫れから袴の股立を取て進退に都合の好いように―して」〈福沢福翁自伝
歌舞伎浄瑠璃で、戯曲の背景となる類型的な「世界5」に対して、戯曲に新しい変化を与えるための工夫。
俳諧で、句の構想。
[類語]新機軸創意

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典 第2版「趣向」の解説

しゅこう【趣向】

歌舞伎の脚本構成法の一つ。脚本の縦筋となる〈世界〉に対して,横筋をいう語。〈世界〉とは,固定化した既成の類型であり,この動かない〈世界〉に働きかけて狂言に新しい変化を与える工夫が〈趣向〉である。太閤記の世界に石川五右衛門を趣向としてからませることによって《金門五山桐》という新しい狂言が作り出されるわけである。したがって,趣向はつねに新奇な魅力を必要とし,その案出が,狂言作者才能のうちもっとも重要なものである。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

普及版 字通「趣向」の解説

【趣向】しゆこう(かう)

方向。趣旨。唐・杜牧〔春末、池州の弄水亭に題す〕詩 (主父)偃は(すべか)らく五鼎(の食)を求むべしと 陶(潜)は(た)だが廬を愛すと 趣向人皆異なり 賢豪渠(かれ)を笑ふこと(なか)れ

字通「趣」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典内の趣向の言及

【歌舞伎】より

…治助の作品は伝統的な江戸歌舞伎独特の作風を洗練・発展させたもので,全体にはなやかなムードに包まれ,洒脱で機知に富んでいる。奇抜な趣向を立てることにすぐれ,会話も軽みを主として,すらすらと運ばれる。 初世仲蔵を中心として,立役も舞踊を演じることがふつうになり,常磐津や富本を地とする劇舞踊が流行するのもこの時代である。…

【世界】より

…したがって個々の〈世界〉は恒久不変的なものでなく,時代的な流行もあり,類型の形成により新生し名目のみ残り使用されなくもなる。作者は役者や観客に共通の知識となっている〈世界〉の上に新しく案出した〈趣向〉を脚色したり,複数の〈世界〉を混合したりして作品を作る。〈世界〉の用語は1757年(宝暦7)7月江戸中村座の役割番付の小名題に〈仕組〉や〈趣向〉とともに記されており,すでに劇作用語として成立している。…

※「趣向」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

今日のキーワード

半夏生

半夏ともいう。七十二候の一つで,本来は夏至後 10日目から小暑の前日までをいったが,現行暦では太陽の黄経が 100°に達する日 (7月1日か2日) を半夏生とし,雑節の一つとして記載している。この頃半...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android