内科学 第10版 「無脾・多脾症」の解説
無脾・多脾症(候群)(その他の先天性心疾患)
正常では左右非対称となるべき臓器(群)が対称性を呈する,心臓を含む多臓器の異常と考えられる.右側相同の場合には無脾,左側相同の場合には多脾となることが多いが,脾臓には異常を伴わない例も少なくない.臓器錯位症候群ともオーバーラップする概念である.先天性心疾患の4.5%,また1000出生に対し0.025人という報告がある.胚での左右決定の機構は近年解明が進んでおり,関連するnodal,lefty,Pitx2などの因子の役割も知られつつあるが,ヒトでの無脾・多脾症においてのこれらの因子の変異の報告は少ない. 主たる心血管合併症としては,無脾では両側上大静脈,心房中隔欠損(単心房),共通房室弁,大血管転位,肺動脈狭窄(閉鎖),総肺静脈還流異常であり,多脾では両側上大静脈,下大静脈離断,心房中隔欠損(単心房),共通房室弁,左室流出路狭窄,大血管転位,肺動脈狭窄(閉鎖),部分肺静脈還流異常および房室ブロックである.前者での総肺静脈還流異常は生直後には目立たなくても,肺静脈狭窄が乳児期早期もしくは後期に顕著となることがある.前者ではほとんどすべてがFontan手術の対象となるが,後者では半数以上に2心室収縮の可能性がある.ただ術後にも肺高血圧,左室流出路狭窄の進行,不整脈の出現などが問題となる.[山田 修]
■文献
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出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報