物理吸着(読み)ブツリキュウチャク

化学辞典 第2版 「物理吸着」の解説

物理吸着
ブツリキュウチャク
physical adsorption

吸着結合の性質による分類の一つで,吸着分子と表面との相互作用が弱い分子間力によるものをさし,ファンデルワールス吸着ともいう.吸着結合が双極子-双極子および誘起双極子間の相互作用あるいは分散力によるため,吸着分子内部の化学結合はほとんど変化せず,沸点以下の温度では,固体の種類によらず吸着を生じる.吸着熱は十数 kJ mol-1 を超えないが,吸着は圧の増加につれて多分子層に成長し,液体としての凝縮に連続的に移行する.物理吸着の応用としては,吸着等温線から単分子層にあたる吸着分子数を求め,分子断面積の値を利用して固体の表面積を推定することが広く行われている.これには窒素,二酸化炭素,希ガス,飽和炭化水素などが液体窒素温度から室温の範囲で使われ,その解析にはBET吸着等温式が用いられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の物理吸着の言及

【吸着】より

…これは表面での金属と気体との化学反応と考えることができ,吸着時の発熱が大きく,簡単に気体が金属から離れることはない。これに対して,吸着される成分の分子と固体表面の間の物理的な力,すなわちファン・デル・ワールス力などにより吸着が生じる場合を物理吸着といい,この場合の吸着時に発生する熱は,その吸着分子の凝縮熱より若干高い程度である。通常の分離操作等に利用されるのは物理吸着の場合が多い。…

※「物理吸着」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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