瓜姫物語(読み)うりひめものがたり

改訂新版 世界大百科事典 「瓜姫物語」の意味・わかりやすい解説

瓜姫物語 (うりひめものがたり)

室町時代の物語。作者未詳。1巻。大和国石上(いそのかみ)に住む老夫婦が子を授かる夢告をうける。美しい瓜が〈光るほどの姫君〉に変じ,長じて国の守護代との婚儀がととのうが,〈あまのさぐめ〉が姫を誘拐,木の上に縛り上げ,自分が姫になりすます。婚礼行列が木の下を通ると,〈ふるちごを迎へとるべき手車にあまのさぐこそ乗りて行きけれ〉という美しい歌声が聞こえ,にせの姫の正体を明かす。姫君は助けられ,あまのさぐめは引き裂かれ大和国宇陀野辺に捨てられる。その血でススキの下が赤くなったという。異常出生譚の一つで,〈桃太郎〉の桃と同じく瓜にも神秘なものが宿ると考えられ,姫の体験する危難は成女式の反映ともいわれる。昔話の〈瓜子姫〉ときわめて近い関係にあり,姫がアマノジャクに殺害されるという東日本に多い型と,姫は殺されず助けられて幸福になるという西日本に多い型とがある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報