男の敵(読み)おとこのてき(その他表記)The Informer

改訂新版 世界大百科事典 「男の敵」の意味・わかりやすい解説

男の敵 (おとこのてき)
The Informer

アメリカ映画。1935年製作。ジョン・フォードが初めて手がけたアイルランドもの。出来心から友人のIRA党員をイングランドの軍人組織に売り,罪の意識と党による報復恐怖に苦悶する男を,ビクター・マクラグレンが好演。フォードの従弟であるアイルランド人作家,リーアム・オフラハティの問題小説(1926)の映画化である。フォードは,この作品によりアメリカ映画を代表する監督の一人に加わった。低額予算で製作されたが,霧をはわせたダブリンの夜の街のセット撮影がみごとな効果を上げ,トーキー的表現の斬新な力強さも当時高く評価された。
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デジタル大辞泉プラス 「男の敵」の解説

男の敵

1935年製作のアメリカ映画。原題《The Informer》。監督:ジョン・フォード、出演:ビクター・マクラグレン、ヘザー・エンジェル、プレストン・フォスターほか。第8回米国アカデミー賞作品賞ノミネート。同監督賞、主演男優賞(ビクター・マクラグレン)、脚色賞、作曲賞受賞。

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世界大百科事典(旧版)内の男の敵の言及

【フォード】より

…ジョン・ウェイン,モーリン・オハラ,ビクター・マクラグレンなどの人々は〈フォード一家〉と呼ばれてファンに親しまれた。 開拓史上有名な土地争奪戦(いわゆる〈ランド・ラッシュ〉)を背景に,若い恋人たちを守って戦う心優しい無頼漢たちを描いた《三悪人》(1926),愛するわが子たちを次々に戦争に奪われるドイツの母の悲劇を描いた《四人の息子》(1928),伝染病と戦い,愛妻を失う一医師の人生を描いた《人類の戦士》(1931),アイルランド独立戦争のさなか自由へのあこがれから親友を売って自滅する愚直な男を描いた《男の敵》(1935),〈ウィル・ロジャース三部作〉とよばれる人情味あふれる豪快な喜劇,すなわち《ドクター・ブル》(1933),《プリースト判事》(1934),《周遊する蒸気船》(1935),スタインベックの名作の映画化《怒りの葡萄》(1940),ウェールズの一鉱山の盛衰とそこに生きた一家族の明暗を描いた《わが谷は緑なりき》(1941),詩的西部劇の傑作として名高い《荒野の決闘》(1946),ときにシリアスにときにユーモラスに西部辺境の騎兵隊の生活を描いた〈騎兵隊三部作〉として知られる《アパッチ砦》(1948),《黄色いリボン》(1949),《リオ・グランデの砦》(1950),アイルランド気質あふれるコミカルな人情劇《静かなる男》(1952),インディアンに奪われた少女を探し求める男の執念と孤独と憎しみの旅路を描いた《捜索者》(1956),古き西部の終焉を描いた《リバティ・バランスを射った男》(1962),白人に追われるインディアンの一群の生れ故郷への悲惨な大移動を描いた《シャイアン》(1964)……。フォードの作品歴は,契約監督時代と独立プロ時代に大きく分けられ,前半は22歳(1917)から第2次世界大戦直後の51歳まで,後半は52歳(1947)から71歳(1966)までとなる。…

※「男の敵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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