日本大百科全書(ニッポニカ) 「矢の家」の意味・わかりやすい解説
矢の家
やのいえ
The House of the Arrow
イギリスの推理作家A・E・W・メースンの長編。1924年に発表され、しばしば推理小説ベストテンにリストアップされる古典的推理名作の一つである。ハーロウ夫人の死によって遺産が養女ベティに残されたが、それを知った義弟が彼女を夫人の殺害犯人として告発する。パリ警視庁のアノーが現地に急行して捜査を開始する。ときにホームズと比較される鋭い証拠分析力と論理性に富むアノーは、やがて真犯人に迫り、罠(わな)を仕掛けて激しい心理闘争を展開する。機知あふれる皮肉とユーモア、豊かな雰囲気と性格描写が、作品の文学性を高めている。
[梶 龍雄]
『福永武彦訳『矢の家』(創元推理文庫)』