移動率(読み)いどうりつ

知恵蔵 「移動率」の解説

移動率

人口に対する移動者数の比率。2006年に4.4%となり、統計を取り始めた1954年以来、最も低い値を記録した。第2次世界大戦後、移動率は56年の5.4%から上昇を開始し、高度経済成長末期である70年の8.0%までほぼ連続的に増加。この時期の上昇は、高い経済成長に支えられた労働需要増大に加え、大人口集団である団塊の世代が労働市場に新規参入したことに起因している。しかし、70年を境に、経済が低成長期に入ったことに加え、ベビーブーム後のベビーバスト(出生数の急減)の世代が労働力に入ってきたことで、人口の移動率が低下した。人口移動パターンも変化しており、高度成長期には農山村から大都市圏への移動が中心であったが、70年代後半から、大都市圏から農山村への移動が主流を占めた。この現象は、高度成長期に農山村から大都市圏へ移動した人が農山村へ戻っていったもので、Uターン、Jターンと呼ばれ、地方へ人口を分散するための好ましい現象と評価された。近年では、大都市で生育した人が農山村へ永住するために移動するIターンが注目されている。

(小川直宏 日本大学教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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