精選版 日本国語大辞典 「統計」の意味・読み・例文・類語
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社会現象の量を反映する数字であり、とくに社会集団の状況を数字によって表現したもの。しかし、現代の統計学における統計的方法の急速な進歩とその普及に伴って、より一般的には、自然現象や抽象的な数値の集団をも含めて、いっさいの集団的現象を数字で表したものを統計とよんでいる。
[泉 俊衛・飯塚信夫 2020年12月11日]
統計の本質とは何かが問われるのは、主として狭義の意味における統計、つまり、社会的集団の状況を語る数字としての統計についてである。自然現象や単に抽象的な数値の集団にかかわる数字については、それらが統計としてもつ意義や特質は初めからとくに問題にならないからである。
統計の本質は、それがまず社会に実在する固有の事実と結び付き、同時に社会的存在としての集団についての数字データであることである。たとえば、ある人の賃金20万円、ある世帯の月収30万円などと、それが固有の事実に結び付き、また社会現象とみられるものであっても、それが単一の個体についての数字データであるとき、それはまだ統計とはよばない。それらが含まれた集団、つまり、労働者や世帯の具体的なある一定の集団についての数字データ、同種の事例(個体)を集めた集団についての数字が統計である。統計は、統計調査における統計集団の構成(単位、標識、特定の時点ないし時間と場所ないし範囲の規定)に基づいてとらえられる。その場合、統計集団をいかに構成するか、より具体的にいえば、統計集団の4要素である単位、標識、時と場所をどう規定するか、また、とくに単位や標識に関連して具体的な概念や定義をどのように定めるかが、つくられる統計の本質にかかわってきわめて重要なポイントである。なぜならば、統計集団の構成いかんがその統計の性質を決めるからである。たとえば、賃金とか失業者数を示す統計についていえば、何を賃金とし、どういう状態にあることを失業とするかについて具体的な概念や定義(平たくいえば統計調査に先だつ約束事)として規定しなければならず、統計はそれらの規定に基づいて賃金額や失業者数を数字として表しているのである。
また、統計は、現実の一定の社会関係のもとで、調査者と被調査者との間で質問・回答が行われる統計調査という特殊な手続を経てつくられるが、そこには相互の協力や利害に伴う対抗関係が働く。さらに統計は、必要性や作成能力という点からみて、その大部分が政府や地方自治体などによる官庁統計として作成されているという特殊性をもっている。そしてこれらは、現実の統計がもつ意義や特質に一定のかかわりをもっている。このようなことは、統計の利用という面からいえば、統計数字の利用に先だって、その統計が何をどのような定義や概念規定に基づいて数字としてとらえているか、その統計調査はどのような調査目的から具体的に何を調査し、何を統計として示しているかを吟味・検討することが重要であることを意味している。
[泉 俊衛・飯塚信夫 2020年12月11日]
統計には、統計を得ることを直接の目的として統計調査を実施し、その結果から作成されるものと、種々の行政上の記録や報告などから作成されるものとがある。前者は第一義統計とよばれ、国勢調査をはじめとして、センサスとよばれるいくつかの大規模な全数調査と、各省庁などがそれぞれの行政目的から行う多数の標本調査によってつくられる統計とがある。また、後者は第二義統計あるいは業務統計とよばれ、出生・死亡、結婚・離婚の届出に基づく人口動態統計をはじめ、各省庁の行政上の記録や報告に基づいて編成される多数の統計が含まれる。業務統計は直接に統計調査を実施してつくられるものではないが、多面的かつ多数にわたり、たとえば財務省や日本銀行などによって編成される財政・金融統計など、社会や経済に関する重要な統計が多く、統計体系のなかでも重要な位置を占めている。
統計を統計調査の目的からみれば、センサス、構造統計、動態統計の三つに区分される。
センサスは対象となる集団のすべての単位を漏れなく調査するもので、たとえば全国民を対象とする国勢調査はその典型的な例である。センサスは統計調査のもっとも基本的な形態で、それは対象とする集団の大きさを確定し、またその大まかな構造を明らかにする。日本では、国勢調査のほかに、事業所のすべてをとらえる経済センサス(事業所・企業統計調査は2009年に経済センサスに統合された)、製造業に属する事業所をとらえる工業統計調査、農業について全農家をとらえる農林業センサスなどがある。なお、センサスは多数行われる標本調査のための母集団枠の確定に用いられ、この面でも基礎的な統計である。
構造統計は大規模な標本調査として行われ、対象となる集団の内部構造を明らかにするものである。就業構造や賃金構造に関する統計調査はその典型的な例であり、そのほかに、各省庁が行政上、集団の全体について把握する業務統計のうちに構造統計としての意義をもつものがある。
動態統計は、集団について毎月ないし毎年の変化をとらえるとともに、センサスや構造統計を補完する統計であり、たとえば日本の雇用・賃金・労働時間の推移や変化をとらえるために厚生労働省が行っている毎月勤労統計調査などはその典型的な例である。なお、国勢調査のように調査にあたって集団を一時点でとらえるものを静態統計とよぶのに対して、たとえば1年間の出生数、1か月間の工業生産額や商品販売額などのように、ある一定の期間についてとらえるものを動態統計とよんでいる。
また、統計を内容的な面からみると、まず初めにもっとも基礎的なものであり、かつやや独自の分野として発展してきた人口統計、次に社会・経済の発展につれてその領域を拡充してきた、産業・貿易・物価・経営・労働・家計などの経済諸統計の系統、そして三つ目に社会の文化的・制度的発展に伴って生み出されてきた、教育・衛生・文化・災害・犯罪・社会保障・環境条件などに関する統計の系統、というように三つに分けられよう。そしてさらに、加工統計として、統計調査の結果からつくられる物価指数や生産指数などがあり、より新しい分野としては、多くの経済データを統合して国民経済全体の構造や動きをマクロ的にとらえる国民経済計算体系(国民所得勘定・産業連関表・資金循環表・国際収支表・国民貸借対照表の五つの国民経済勘定を総称していう)などがしだいに整備され、現在の統計体系を形づくっている。なお、この間に、統計調査に用いられる分類として、標準産業分類・標準職業分類などいくつかの標準分類も定められ、改訂が重ねられて、統計調査に用いる共通分類として整備されてきたことはいうまでもない。
[泉 俊衛・飯塚信夫 2020年12月11日]
国際的にみると、各国の統計活動の面での協力・調整を図るために、国際連合(国連)に統計局が設けられ、各国が用いる統計上の概念や分類などの統一・調整が図られたり、各国政府に社会・経済に関する統計報告を求め、それに基づいて『世界統計年鑑』Statistical Yearbookが作成されている。また、国連では国民経済計算体系についても統一方式を定めており、日本の場合もそれに準拠している。そのほかに国際労働機関(ILO)、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、国際通貨基金(IMF)のような国際機関や、経済協力開発機構(OECD)などにおいても国際的な統計の収集が行われている。現在、先進諸国の統計はほぼ整備されているが、多くの開発途上国のなかには基礎的な人口や主要生産物の生産量などの統計についてなお十分な統計がつくられていないところもある。
[泉 俊衛・飯塚信夫 2020年12月11日]
国家が、徴税その他の目的から、人口や土地・産物などを調べ、統計を作成することは古くから行われ、それらの記録は、たとえば古代ローマや古代中国の例にみるように紀元前にまでさかのぼる。けれども統計の発達はむろん一様ではなく、とくに封建的な分権化が進んだ中世には、一般に信頼できる統計は残されていない。
近代的な統計作成の始まりは19世紀初頭以降のヨーロッパにおいてであり、それは人口統計の作成、つまり各国における国勢調査の実施であった。すでにドイツやスウェーデンでは18世紀なかばから統計調査を始めていたが、19世紀初頭にはフランスやイギリスでも人口調査が行われ、アメリカでも独立後まもない1790年に第1回の国勢調査が行われていた。この時期に官庁統計の改善や国際統計会議の開催など、統計の普及と進歩に大きく貢献したのがベルギーの統計学者A・ケトレーであった。そして、19世紀中ごろには先進諸国の統計制度は漸次整備され、産業や物価・貿易などの経済統計が作成されるようになって、統計の種類もしだいに増加していった。さらに、19世紀後半以降になると、資本主義経済の発展は一面で深刻な社会問題を生み出し、これらの社会問題に対する関心を背景に、雇用・失業や賃金・労働時間などについての労働統計、貧困や生活問題にかかわる生計費や家計費統計などが加えられた。さらに進んで20世紀に入ると、先進諸国の統計はいっそう拡充されることとなった。とくに第一次世界大戦後、国家は経済政策や社会保障政策の推進のために、国民経済の各面へしだいに積極的に介入することとなり、そのためにも多面的な統計の必要性が増大したからである。
一方、19世紀後半から20世紀にかけて、先に述べた統計学における統計的方法(統計的データの数学的な処理・分析法)の急速な進歩とその普及に伴って、多面的な学問領域や応用分野における数字データの必要性が高まり、開発が促進された。それはまず生物学におけるデータへの統計的方法の適用を契機とするものであったが、やがてそれは生物学から医学・工学などの分野に広がり、また、生産工程における品質管理やオペレーションズ・リサーチなど、技術的方策の実践的分野への適用を促した。そしてこのような統計的方法の適用は広く社会科学の領域にも広がった。まず、それは経済学における計量的な経済分析に適用され、とくに1940年以降、マクロ的な経済の予測や構造分析を主眼とする計量経済学の発展をもたらした。それは国民経済全体を組織的に把握するための方法論を確立させ、それに対応する統計データの開発・整備を促し、第二次世界大戦後から現在にかけて国民経済計算体系とよばれる一国経済に関する総合的な統計を開発させた。さらに、統計的方法は社会学・政治学・教育学などの領域にも広がりつつある。なお、このような傾向に大きく貢献しているのが、コンピュータの進歩・普及とその技術の急速な開発であることはいうまでもない。
[泉 俊衛・飯塚信夫 2020年12月11日]
日本でも古い時代の統計の記録は若干残されているが、近代的な統計制度、統計の作成は明治維新における新政府の出発とともに始まった。すべての面で近代化を進める政府の努力はこの面でも著しいものがあった。1871年(明治4)、当時の大蔵省に統計司が置かれ、それは政表課・統計院を経て、1885年の内閣制度の発足時に内閣統計局となった。これがのちに総務庁統計局となり、2001年(平成13)1月からは中央省庁再編により総務省の所属(総務省統計局)になった。
統計の面では、まず人口・土地・物産など基礎的統計の整備に始まり、社会・経済の発展につれて漸次各分野の統計がつくられていった。1920年(大正9)初めて国勢調査が行われ、その後さらに労働・家計・商業・経営など統計調査の対象部門も広がり、昭和初期ごろまでには統計の体系も不十分ながらいちおう整えられた。
しかし、第二次世界大戦中にこれらの統計制度はほとんど解体された。したがって、戦後の日本の再建の過程は、一面では統計制度・統計体系の再建ならびに発展の過程でもあった。1946年(昭和21)内閣に統計委員会が設置され、翌1947年には統計法が制定・施行された。そして昭和30年代には現在の主要な統計体系が完成し、統計の面では世界の先進国の水準に到達し現在に至っている。
[泉 俊衛・飯塚信夫 2020年12月11日]
『有沢広巳・内藤勝著『統計学』(1956・弘文堂)』▽『日本統計研究所編『日本統計発達史』(1960・東京大学出版会)』▽『内海庫一郎他編『統計学』(1973・有斐閣)』▽『泉俊衛著『統計学』(1985・光和堂)』▽『三潴信邦他著『統計学入門』(有斐閣新書)』
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…統計学とは何かということについては,いろいろな定義が与えられている。それを統計ないし統計的方法に関する学問と考えれば,その内容は一般に,(1)社会統計,(2)理論統計,(3)応用統計の三つに分けられる。
[社会統計学]
社会統計学は社会的制度としての統計を対象とする分野であり,それがふつうは政府の手によって作られるので,官庁統計と呼ばれ,それを対象とする学問は社会統計学とも呼ばれる。社会統計学においては統計の意義,統計調査法,統計制度,統計体系,統計の歴史などが研究対象とされる。…
…
【情報科学への歩み】
情報科学が成立する以前から,人間は情報を利用してきた。計算,制御,通信,統計など,情報関係の学問を個別に築いてきたのであり,こうした分野が情報科学の成立を準備した。各分野の発展について少し述べてみよう。…
※「統計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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