統計(読み)トウケイ(その他表記)statistics 英語

デジタル大辞泉 「統計」の意味・読み・例文・類語

とう‐けい【統計】

[名](スル)集団の個々の構成要素の分布を調べ、その集団の属性を数量的に把握すること。また、その結果を数値や図表で表現したもの。「統計をとる」「統計を出す」「就業人口統計する」
[類語]合算通算

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精選版 日本国語大辞典 「統計」の意味・読み・例文・類語

とう‐けい【統計】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 種々の数量をまとめて計算すること。また、そのまとまった数量。合計。〔文明いろは字引(1877)〕
  3. 集団での個々の要素がもつ数値の分布や、その分布の特徴を示す数値の総体。
    1. [初出の実例]「人口は一千八百七十一年の統計に、八万六千七百八十六人に及ぶ」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一)
    2. 「医学上の統計から精密に割り出されたる結論であって」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉九)
  4. とうけいがく(統計学)」の略。

統計の語誌

( 1 )明治初期からのように合計の意が見られるが、その一方でのように、statistic の訳語としても用いられた。
( 2 )日本政府はの統計を重視し、明治四年(一八七一)に大蔵省の中に統計司を置き、翌年統計寮に改めたのに続き同一四年には統計院を設置し、翌年から「統計年鑑」を編纂することになるなど力を入れたため、次第にの意では使われなくなった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「統計」の意味・わかりやすい解説

統計
とうけい
statistics 英語
Statistik ドイツ語
statistique フランス語

社会現象の量を反映する数字であり、とくに社会集団の状況を数字によって表現したもの。しかし、現代の統計学における統計的方法の急速な進歩とその普及に伴って、より一般的には、自然現象や抽象的な数値の集団をも含めて、いっさいの集団的現象を数字で表したものを統計とよんでいる。

[泉 俊衛・飯塚信夫 2020年12月11日]

統計の本質

統計の本質とは何かが問われるのは、主として狭義の意味における統計、つまり、社会的集団の状況を語る数字としての統計についてである。自然現象や単に抽象的な数値の集団にかかわる数字については、それらが統計としてもつ意義や特質は初めからとくに問題にならないからである。

 統計の本質は、それがまず社会に実在する固有の事実と結び付き、同時に社会的存在としての集団についての数字データであることである。たとえば、ある人の賃金20万円、ある世帯の月収30万円などと、それが固有の事実に結び付き、また社会現象とみられるものであっても、それが単一の個体についての数字データであるとき、それはまだ統計とはよばない。それらが含まれた集団、つまり、労働者や世帯の具体的なある一定の集団についての数字データ、同種の事例(個体)を集めた集団についての数字が統計である。統計は、統計調査における統計集団の構成(単位、標識、特定の時点ないし時間と場所ないし範囲の規定)に基づいてとらえられる。その場合、統計集団をいかに構成するか、より具体的にいえば、統計集団の4要素である単位、標識、時と場所をどう規定するか、また、とくに単位や標識に関連して具体的な概念や定義をどのように定めるかが、つくられる統計の本質にかかわってきわめて重要なポイントである。なぜならば、統計集団の構成いかんがその統計の性質を決めるからである。たとえば、賃金とか失業者数を示す統計についていえば、何を賃金とし、どういう状態にあることを失業とするかについて具体的な概念や定義(平たくいえば統計調査に先だつ約束事)として規定しなければならず、統計はそれらの規定に基づいて賃金額や失業者数を数字として表しているのである。

 また、統計は、現実の一定の社会関係のもとで、調査者と被調査者との間で質問・回答が行われる統計調査という特殊な手続を経てつくられるが、そこには相互の協力や利害に伴う対抗関係が働く。さらに統計は、必要性や作成能力という点からみて、その大部分が政府や地方自治体などによる官庁統計として作成されているという特殊性をもっている。そしてこれらは、現実の統計がもつ意義や特質に一定のかかわりをもっている。このようなことは、統計の利用という面からいえば、統計数字の利用に先だって、その統計が何をどのような定義や概念規定に基づいて数字としてとらえているか、その統計調査はどのような調査目的から具体的に何を調査し、何を統計として示しているかを吟味・検討することが重要であることを意味している。

[泉 俊衛・飯塚信夫 2020年12月11日]

統計の体系

統計には、統計を得ることを直接の目的として統計調査を実施し、その結果から作成されるものと、種々の行政上の記録や報告などから作成されるものとがある。前者は第一義統計とよばれ、国勢調査をはじめとして、センサスとよばれるいくつかの大規模な全数調査と、各省庁などがそれぞれの行政目的から行う多数の標本調査によってつくられる統計とがある。また、後者は第二義統計あるいは業務統計とよばれ、出生・死亡、結婚・離婚の届出に基づく人口動態統計をはじめ、各省庁の行政上の記録や報告に基づいて編成される多数の統計が含まれる。業務統計は直接に統計調査を実施してつくられるものではないが、多面的かつ多数にわたり、たとえば財務省や日本銀行などによって編成される財政・金融統計など、社会や経済に関する重要な統計が多く、統計体系のなかでも重要な位置を占めている。

 統計を統計調査の目的からみれば、センサス、構造統計動態統計の三つに区分される。

 センサスは対象となる集団のすべての単位を漏れなく調査するもので、たとえば全国民を対象とする国勢調査はその典型的な例である。センサスは統計調査のもっとも基本的な形態で、それは対象とする集団の大きさを確定し、またその大まかな構造を明らかにする。日本では、国勢調査のほかに、事業所のすべてをとらえる経済センサス(事業所・企業統計調査は2009年に経済センサスに統合された)、製造業に属する事業所をとらえる工業統計調査、農業について全農家をとらえる農林業センサスなどがある。なお、センサスは多数行われる標本調査のための母集団枠の確定に用いられ、この面でも基礎的な統計である。

 構造統計は大規模な標本調査として行われ、対象となる集団の内部構造を明らかにするものである。就業構造賃金構造に関する統計調査はその典型的な例であり、そのほかに、各省庁が行政上、集団の全体について把握する業務統計のうちに構造統計としての意義をもつものがある。

 動態統計は、集団について毎月ないし毎年の変化をとらえるとともに、センサスや構造統計を補完する統計であり、たとえば日本の雇用・賃金・労働時間の推移や変化をとらえるために厚生労働省が行っている毎月勤労統計調査などはその典型的な例である。なお、国勢調査のように調査にあたって集団を一時点でとらえるものを静態統計とよぶのに対して、たとえば1年間の出生数、1か月間の工業生産額や商品販売額などのように、ある一定の期間についてとらえるものを動態統計とよんでいる。

 また、統計を内容的な面からみると、まず初めにもっとも基礎的なものであり、かつやや独自の分野として発展してきた人口統計、次に社会・経済の発展につれてその領域を拡充してきた、産業・貿易・物価・経営・労働・家計などの経済諸統計の系統、そして三つ目に社会の文化的・制度的発展に伴って生み出されてきた、教育・衛生・文化・災害・犯罪・社会保障・環境条件などに関する統計の系統、というように三つに分けられよう。そしてさらに、加工統計として、統計調査の結果からつくられる物価指数生産指数などがあり、より新しい分野としては、多くの経済データを統合して国民経済全体の構造や動きをマクロ的にとらえる国民経済計算体系国民所得勘定産業連関表・資金循環表・国際収支表・国民貸借対照表の五つの国民経済勘定を総称していう)などがしだいに整備され、現在の統計体系を形づくっている。なお、この間に、統計調査に用いられる分類として、標準産業分類・標準職業分類などいくつかの標準分類も定められ、改訂が重ねられて、統計調査に用いる共通分類として整備されてきたことはいうまでもない。

[泉 俊衛・飯塚信夫 2020年12月11日]

国際統計

国際的にみると、各国の統計活動の面での協力・調整を図るために、国際連合(国連)に統計局が設けられ、各国が用いる統計上の概念や分類などの統一・調整が図られたり、各国政府に社会・経済に関する統計報告を求め、それに基づいて『世界統計年鑑』Statistical Yearbookが作成されている。また、国連では国民経済計算体系についても統一方式を定めており、日本の場合もそれに準拠している。そのほかに国際労働機関(ILO)、国連食糧農業機関(FAO)、世界保健機関(WHO)、国際通貨基金(IMF)のような国際機関や、経済協力開発機構(OECD)などにおいても国際的な統計の収集が行われている。現在、先進諸国の統計はほぼ整備されているが、多くの開発途上国のなかには基礎的な人口や主要生産物の生産量などの統計についてなお十分な統計がつくられていないところもある。

[泉 俊衛・飯塚信夫 2020年12月11日]

統計制度の沿革

国家が、徴税その他の目的から、人口や土地・産物などを調べ、統計を作成することは古くから行われ、それらの記録は、たとえば古代ローマや古代中国の例にみるように紀元前にまでさかのぼる。けれども統計の発達はむろん一様ではなく、とくに封建的な分権化が進んだ中世には、一般に信頼できる統計は残されていない。

 近代的な統計作成の始まりは19世紀初頭以降のヨーロッパにおいてであり、それは人口統計の作成、つまり各国における国勢調査の実施であった。すでにドイツやスウェーデンでは18世紀なかばから統計調査を始めていたが、19世紀初頭にはフランスやイギリスでも人口調査が行われ、アメリカでも独立後まもない1790年に第1回の国勢調査が行われていた。この時期に官庁統計の改善や国際統計会議の開催など、統計の普及と進歩に大きく貢献したのがベルギーの統計学者A・ケトレーであった。そして、19世紀中ごろには先進諸国の統計制度は漸次整備され、産業や物価・貿易などの経済統計が作成されるようになって、統計の種類もしだいに増加していった。さらに、19世紀後半以降になると、資本主義経済の発展は一面で深刻な社会問題を生み出し、これらの社会問題に対する関心を背景に、雇用・失業や賃金・労働時間などについての労働統計、貧困や生活問題にかかわる生計費や家計費統計などが加えられた。さらに進んで20世紀に入ると、先進諸国の統計はいっそう拡充されることとなった。とくに第一次世界大戦後、国家は経済政策や社会保障政策の推進のために、国民経済の各面へしだいに積極的に介入することとなり、そのためにも多面的な統計の必要性が増大したからである。

 一方、19世紀後半から20世紀にかけて、先に述べた統計学における統計的方法(統計的データの数学的な処理・分析法)の急速な進歩とその普及に伴って、多面的な学問領域や応用分野における数字データの必要性が高まり、開発が促進された。それはまず生物学におけるデータへの統計的方法の適用を契機とするものであったが、やがてそれは生物学から医学・工学などの分野に広がり、また、生産工程における品質管理やオペレーションズ・リサーチなど、技術的方策の実践的分野への適用を促した。そしてこのような統計的方法の適用は広く社会科学の領域にも広がった。まず、それは経済学における計量的な経済分析に適用され、とくに1940年以降、マクロ的な経済の予測や構造分析を主眼とする計量経済学の発展をもたらした。それは国民経済全体を組織的に把握するための方法論を確立させ、それに対応する統計データの開発・整備を促し、第二次世界大戦後から現在にかけて国民経済計算体系とよばれる一国経済に関する総合的な統計を開発させた。さらに、統計的方法は社会学・政治学・教育学などの領域にも広がりつつある。なお、このような傾向に大きく貢献しているのが、コンピュータの進歩・普及とその技術の急速な開発であることはいうまでもない。

[泉 俊衛・飯塚信夫 2020年12月11日]

日本における沿革

日本でも古い時代の統計の記録は若干残されているが、近代的な統計制度、統計の作成は明治維新における新政府の出発とともに始まった。すべての面で近代化を進める政府の努力はこの面でも著しいものがあった。1871年(明治4)、当時の大蔵省に統計司が置かれ、それは政表課・統計院を経て、1885年の内閣制度の発足時に内閣統計局となった。これがのちに総務庁統計局となり、2001年(平成13)1月からは中央省庁再編により総務省の所属(総務省統計局)になった。

 統計の面では、まず人口・土地・物産など基礎的統計の整備に始まり、社会・経済の発展につれて漸次各分野の統計がつくられていった。1920年(大正9)初めて国勢調査が行われ、その後さらに労働・家計・商業・経営など統計調査の対象部門も広がり、昭和初期ごろまでには統計の体系も不十分ながらいちおう整えられた。

 しかし、第二次世界大戦中にこれらの統計制度はほとんど解体された。したがって、戦後の日本の再建の過程は、一面では統計制度・統計体系の再建ならびに発展の過程でもあった。1946年(昭和21)内閣に統計委員会が設置され、翌1947年には統計法が制定・施行された。そして昭和30年代には現在の主要な統計体系が完成し、統計の面では世界の先進国の水準に到達し現在に至っている。

[泉 俊衛・飯塚信夫 2020年12月11日]

『有沢広巳・内藤勝著『統計学』(1956・弘文堂)』『日本統計研究所編『日本統計発達史』(1960・東京大学出版会)』『内海庫一郎他編『統計学』(1973・有斐閣)』『泉俊衛著『統計学』(1985・光和堂)』『三潴信邦他著『統計学入門』(有斐閣新書)』

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改訂新版 世界大百科事典 「統計」の意味・わかりやすい解説

統計 (とうけい)
statistics
Statistik[ドイツ]

一般に統計とは,社会集団の状況を数字によって表現したものをいう。もっと一般的に,いっさいの集団的現象を数字で表したものは統計的データと呼ばれる。世に発表される統計の大部分は,政府諸機関によって作られている。それらは官庁統計と呼ばれることがある。

近代国家においては,統計作成のための機構が作られている。それには,すべての統計を一つの官庁で作成する集中型と,各官庁にそれぞれの担当する部門に関する統計を作成する部局をもつ分散型との二つのタイプがある。日本では,国勢調査および世帯に関する調査を扱う総務庁統計局のほか,中央省庁に統計を担当する部課があり,また金融関係および卸売物価については日本銀行が担当しており,分散型の統計機構となっている。統計の実地調査の大部分はこれらの中央省庁の企画にもとづいて,県および市町村の統計担当課,係が随時雇用される調査員を指揮して行い,その結果は中央省庁に集められて,集計,整表のうえ公表される。

 中央省庁および地方公共団体等が行う統計調査については,統計法および統計報告調整法(1952公布)が基本的な規定を与えている。統計法においては国勢調査のほか,総務庁長官の指定した統計を指定統計として,それについて調査結果の統計以外の目的への利用の禁止,秘密の保護,結果の公表などを統計作成者に義務づける一方,国民の側には調査に応ずる義務,虚偽の申告に対する罰則などを規定している。指定統計はすでに中止されたもの,1回限りのものも含めて115あるが,国が行う主要な統計調査はほとんどがこれに含まれている(1984年現在)。指定統計調査については,実施者はその内容について総務庁長官の承認を得なければならない。国の機関および地方公共団体等が行うその他の統計調査について一定規模以上のものは,統計報告調整法により実施者は総務庁長官の承認を得なければならないことが規定されている。その手続を経て行われる統計を承認統計という。このような手続のなかで統計調査の総合調整を行う機関として,総務庁統計局に統計基準部があり,また統計審議会が設置されている。

統計のなかには,そのためにとくに行われる統計調査の結果得られるものと,行政上の記録や報告などにもとづいて作られるものとがある。前者を第一義統計,後者を第二義統計あるいは業務統計という。業務統計の主要なものには出生・死亡,婚姻・離婚の届出にもとづいて作られる人口動態統計,税関の申告書にもとづいて作られる通関貿易統計などがある。

 統計調査はセンサス,構造統計,動態統計の3種類に分けて考えることができる。センサスは集団全体を把握して,もれなく数え上げることを目的として行われる調査であり,全国民を対象とする国勢調査のほか,全産業の全事業所を対象とする事業所統計(事業所センサス)および工業統計(工業センサス。ただしセンサスと呼びうるものは毎年ではない),商業統計(商業センサス),農林業センサスなどがある。このうちとくに国勢調査および事業所統計は,それ自体から統計表を作るほか,他の統計調査のための調査区リストや名簿,あるいは標本調査のための母集団枠の確定のためにも用いられる。また標本調査の結果から,比推定などの方法を用いて母集団特性値を推定するときの基礎数値を与えることもある。そういう意味でセンサスは統計の体系のなかでも基礎的な役割を果たしている。構造統計は,全数調査あるいは大規模な標本調査によって対象の構造を明らかにするものであり,ふつう年1回あるいは3~5年に1回行われる。いろいろなセンサスは構造統計としての役割も果たすが,そのほかに就業構造,賃金構造などの統計調査があり,また業務統計のなかにも構造統計としての意味をもつものがある。これに対して動態統計は,毎年または毎月の変化を示し,基礎的数字についてセンサスあるいは構造統計の間をつなぐために用いられる。標本調査によることが多い。

 統計を内容的に分類すれば,人口に関する基礎統計のほかは経済に関する統計,すなわち雇用,産業,物価,家計などに関するものが圧倒的に多い。そのほかには保健衛生に関するもの,事故・災害に関するもの,犯罪に関するものなどがある。また最近の新しい統計としては生活時間に関する統計,環境条件に関する統計などがある。ただし世論調査などのような意見調査の結果は,ふつうは統計体系のなかに含めず,統計関係法規の対象からも除かれている。

統計調査の結果から,いろいろな加工データが作られる。その一つは指数であり,生産指数,物価指数などが計算されている。また多くの経済データを統合して国民経済全体の動きをまとめたものに国民経済計算体系があり,経済企画庁で毎年計算,公表している(〈国民経済計算〉の項参照)。それは国民経済の年々の動きをフローとストックの両面からいくつかの勘定の体系にまとめたものである。さらに産業の相互の関連を一つの表の形にまとめたものに産業連関表があり,日本では各省庁の協力によって5年ごとに作られている。基礎的な表では全産業を約500の部門に分けて,各産業部門ごとの中間投入,最終需要,付加価値を計算している。

統計調査に用いる分類として,いくつかの標準分類が定められている。そのなかで産業分類,疾病・傷害・死因分類については,総務庁長官の公示する分類によらなければならないと政令で定められている。標準分類はときどき改訂されるが,日本標準産業分類は事業所の分類に適用されるものであって,1984年1月改訂のものでは14の大分類,2けたの数字で表される96の中分類,3けたの数字で表される452の小分類からなり,また小分類の下に1262の細分類が設けられている(〈産業分類〉の項参照)。そのほか個人に適用される標準職業分類,建築物に適用される建築物用途分類などがある。

各国における統計活動の調整をはかるため国際連合に統計局があり,各国で用いる統計上の概念や分類などについて統一・調整をはかり,また各国政府から年々人口,貿易,国民所得などに関する報告を求め,それを編集して《世界統計年鑑Statistical Yearbook》を発行している。現在日本で用いられている国民経済計算体系は国連で定めた方式によっている。そのほかILO,FAO,世界保健機関(WHO),IMFのような国際機関,あるいはOECDなども国際的な統計の収集を行っている。

統計数字は社会の現実を反映するものであるが,しかしそれを無批判に用いることは危険である。統計数字には標本調査の場合,標本の値と全体の値のくい違いを表す標本誤差が含まれるが,そのほか標本調査の場合でも全数調査の場合でも,非標本誤差が含まれている。非標本誤差には名簿の不完全さその他の理由からくる調査もれ,調査対象者の誤解あるいは故意による過大あるいは過小申告,調査あるいは回答の拒否,集計整表の際の誤りなどから生ずるものがある。確率標本については,標本誤差の大きさはあらかじめ計画され,また事後にも推定される。非標本誤差については,その大きさをはっきり知ることは困難であるが,ある程度の見当はつけられる場合もある。非標本誤差は標本誤差よりずっと大きくなることもありうる。また概念や定義の相違や変更のために,同じような内容について調査が異なると数字が異なったり,また同じ調査の違う年次の数字が比較できないものになったりすることもあるから注意を要する。

国家が徴税,徴兵その他の目的で戸籍や土地台帳を作り,それにもとづいて統計を作成することは古代から行われていた。古代ローマでの人口の申告調査はセンサスと呼ばれ,現在までその名が残っている。また中国では前漢末期以来,地方ごとの戸数人口数の記録が残されている。日本でも奈良時代までには戸籍が作られた。統計の発達は一様ではなかった。統一国家が崩壊すると,統計数字は得られなくなった。一般に封建的分権化が進んだ中世においては,信頼できる人口統計はほとんど残されていない。

 近代的な統計は,19世紀初頭ヨーロッパで成立した。すなわち国勢調査が18世紀にまず北ヨーロッパで,ついで19世紀初めにはヨーロッパのおもな国々で行われるようになり,人口の正確な大きさが知られるようになった。官庁統計の改善に大きく貢献したのはL.A.J.ケトレであって,国際統計会議(第1回は1853年)を開催し,統計の普及と進歩に努力した。19世紀中ごろには先進諸国の統計制度は整備された。統計の内容は最初は人口や犯罪に関するものが多かったが,しだいに産業や貿易に関する数字も増加し,また19世紀後半社会問題が重要視されるようになって,家計調査なども行われるようになった。20世紀になって先進諸国の統計は拡充強化されたが,とくに第1次大戦後,国家が経済政策や社会保障政策において,国民生活の各面に政策的介入を行うことが多くなると,多面的な統計の必要性が増大し,また国民経済計算論や産業連関論など,国民経済全体を総括的に把握するための方法論も確立されて,統計の体系がとくに経済面を中心として整備されるに至った。また国際連盟,後には国際連合とその関係機関を通じて,統計面における国際協力も進められた。

 先進諸国の統計は整備されているが,ソ連を中心とするかつての社会主義国では,とくに国民経済計算について異なった体系をもっており,比較可能性が問題になる。また多くの発展途上国のなかには,人口や重要物資の生産量などの基礎的な統計についても,まだ信頼すべき数字をもっていないところもある。他方先進国においては,統計の拡大は財政的負担や人員の面からも一応の限界に達している。またプライバシー意識の発達や調査負担(調査票記入の手間)の問題から,調査実施の際の困難も増加している。したがって今後は時代の変化に応じた統計調査の改廃・新設や,コンピューターなど新たな情報技術を利用した各種情報の総合利用などが望まれている。

日本では近代的な統計制度は明治維新とともに導入され,1871年(明治4)太政官に政表課が設けられた。これが81年には統計院となり,85年内閣制度の発足とともに内閣統計局となった。この間,杉亨二(すぎこうじ)や呉文聡(くれあやとし)(1851-1918)が果たした役割には大きなものがある。こうして1920年には初めて国勢調査が行われるなど,しだいに統計が整備されたが,第2次大戦中に制度はほとんど解体し,政府自身信頼できる数字が得られなくなった。46年,内閣に統計委員会が設置され,47年には統計法が制定・施行されるなど,戦後日本の統計制度はアメリカの影響のもとに再建されたが,関係者の努力により大いに発展し,昭和30年代には現在の主要な統計の体系が完成して,統計に関しては世界の先進国に加わるに至った。
数理統計学 →統計学
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百科事典マイペディア 「統計」の意味・わかりやすい解説

統計【とうけい】

多数の構成要素(統計単位)からなる集団において,各要素の観察によって得た数値(統計資料)を処理して集団の性質・傾向を明らかにすること。また統計資料をもいう。集団を一時点でとらえる静態統計と,一定期間でとらえる動態統計に分けられ,また統計調査の主体により官庁統計と民間統計がある。前者は統計法により規制され,特に重要なものは指定統計として扱われる。→統計学
→関連項目グラフ大量観察法

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普及版 字通 「統計」の読み・字形・画数・意味

【統計】とうけい

全体を数的に計算する。

字通「統」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の統計の言及

【統計学】より

…統計学とは何かということについては,いろいろな定義が与えられている。それを統計ないし統計的方法に関する学問と考えれば,その内容は一般に,(1)社会統計,(2)理論統計,(3)応用統計の三つに分けられる。
[社会統計学]
 社会統計学は社会的制度としての統計を対象とする分野であり,それがふつうは政府の手によって作られるので,官庁統計と呼ばれ,それを対象とする学問は社会統計学とも呼ばれる。社会統計学においては統計の意義,統計調査法,統計制度,統計体系,統計の歴史などが研究対象とされる。…

【情報科学】より


【情報科学への歩み】
 情報科学が成立する以前から,人間は情報を利用してきた。計算,制御,通信,統計など,情報関係の学問を個別に築いてきたのであり,こうした分野が情報科学の成立を準備した。各分野の発展について少し述べてみよう。…

※「統計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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