移民キャラバン

共同通信ニュース用語解説 「移民キャラバン」の解説

移民キャラバン

約3200キロに上る米南部国境で昨年10月以降、中米諸国から隊列を組んで米国への入国を図る大量の移民集団。多くは治安悪化から逃れてきた親子連れなどで、トランプ政権は人道主義的な措置を排した不寛容政策強行。対立する民主党との議会協議を避けるため大統領権限でさまざまな対策を導入し、全米各地で違憲訴訟が相次いでいる。移民らの経由地となっているメキシコもトランプ政権による国境閉鎖や懲罰関税を恐れ、取り締まりを強化した。(シウダフアレス共同)

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知恵蔵 「移民キャラバン」の解説

移民キャラバン

ホンジュラスグアテマラエルサルバドルなどの中米諸国からアメリカ合衆国を目指す「移民」の集団。アメリカ合衆国へのヒスパニック系(ラティーノ)移民の歴史は古いが、キャラバンを組んでの移動は、エルサルバドルやニカラグア内戦が終結した後、90年代後半頃に始まったとみられる。
2017年には中米の移民人権団体「国境なき人々(プエブロ・シン・フロンテラス)」が、イースター(3月)に合わせて安全確保を目的としたキャラバンを結成し、これに米国行きを望む約200人が参加した。「国境なき人々」は翌18年3月にもキャラバンを結成。すると米・トランプ大統領が反応し、明確な根拠を示すこともなく、「犯罪者の集まり」「安全保障上の脅威」などと批判した。この発言は国際社会の関心を集めたが、11月初旬の米議会・中間選挙を控え、国内の反移民感情をあおったトランプ流の政治戦略の一つという見方も強い。
更に同年10月初旬、ホンジュラスの元国会議員によるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の呼びかけで、米国行きを望む約160人が移民キャラバンを結成。ホンジュラス国内のマスコミが報道したことなどで徐々に規模が拡大し、ひと月後には後発のキャラバンと合わせて、女性や子どもを含む約1万人(推定)にまで膨れ上がった。背景には、ホンジュラスの極度の貧困(食糧難)と暴力組織による凶悪犯罪の増加、それを解決できない政情不安がある。11月半ば、約4000キロメートルを歩いた移民キャラバンの第一陣が国境のティフアナ(メキシコ北部)に到着すると、トランプ大統領は約5900人の兵士を派遣して国境警備を強化した。現在(18年末時点)、移民の多くはティフアナほかの避難所で申請手続きを待っている状況。

(大迫秀樹 フリー編集者/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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