キクラデス諸島(読み)きくらですしょとう(英語表記)Kykládhes

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キクラデス諸島」の意味・わかりやすい解説

キクラデス諸島
きくらですしょとう
Kykládhes

ギリシア南東部、エーゲ海南部の諸島。アンドロス、ティノス、パロスミロス、ケア、ナクソスなど大小あわせて220の島々からなり、キクラデス県を構成する。県都はシロス島エルムポリス。面積2572平方キロメートル、人口11万2800(2003推計)。その名称は、古代ギリシア人の宗教的中心であったデロス島を環(キクロス)状に囲むことに由来する。もっとも大きいナクソス島は、パロス島とともに古代から良質の大理石の産地として知られる。ミロス(ミロ)島の黒曜石、シフノス島の金や銀も重要であった。ミロス島で発見されたビーナス像(ルーブル美術館蔵)は有名である。

[真下とも子]

歴史

初期青銅器時代にはエーゲ世界で先進的役割を演じた。中期から後期青銅器時代にかけての重要な文化的拠点はミロス島のフィラコピ、ティラ(サントリン)島のアクロティリ、ケア島のアヤ・イリニである。歴史時代には主としてイオニア方言のギリシア人が定住し、ペルシア戦争後はアテネ海上同盟(いわゆるデロス同盟)に加盟して、アテネの支配に服した。ヘレニズム時代にはプトレマイオス王朝の対マケドニアの基地各地に築かれ、のちローマ、ビザンティン帝国の支配を経て、13世紀からベネチアの勢力下にたち、15世紀後半からオスマン帝国に支配された。19世紀前半のギリシア独立戦争によってギリシア領となった(1832)。

[馬場恵二]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キクラデス諸島」の意味・わかりやすい解説

キクラデス諸島
キクラデスしょとう
Kikládhes

古代ギリシア語読みではキュクラデス Kyklades。ギリシア,エーゲ海南部にある島群。地体構造的にはギリシア本土の山地の延長で,ピンドス山脈,アティキ半島の山地から続く山地が沈降して形成された。ギリシア語で「円」を意味するキュクロスに由来する名が示すように,シロス島ないしデロス島を中心に円を描くように連なるアンドロス,ナクソス,パロス,シラ,ミロス,ケアなど 24のおもな島とそれらの周辺の小島から成る。青銅器時代に白い大理石の彫像で知られるキクラデス文明が栄え,古典期にはデロス島にデロス同盟の中枢部がおかれるなど,考古学的,歴史的に重要な島群である。果樹コムギなどが栽培されるほか,小規模ながら金剛砂,大理石,鉄鉱,マンガン,硫黄,ボーキサイトなどを産し,ワイン,ブランデー,たばこ,皮革,陶器,工芸品を輸出。面積 2523km2。人口9万 5083 (1991推計) 。

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