改訂新版 世界大百科事典 「空胴共振器」の意味・わかりやすい解説
空胴共振器 (くうどうきょうしんき)
cavity resonator
共振箱ともいう。マイクロ波の回路にしばしば使われる共振器で,中空の導体壁に囲まれた空間を利用したものである。太鼓の膜の上で特定の周波数の二次元の波動が安定に振動するのと同様に,中空の導体壁に囲まれた空間では,電磁波の三次元の波動が安定に振動を続ける。こうした安定な振動は,この空間の形状で決まるモードと呼ばれる空間パターンをもち,かつそれに対応して共振周波数が決まる。いくつかのモードがあるので,それに対応して共振周波数もいくつか存在するが,それ以外のかってな周波数の振動は存続することができない。空胴共振器を他の回路と結合するには,金属壁にモードをほとんど乱さないほどのごく小さな穴をあけ,その外壁へ外部の回路を接続する。外部から見ると共振周波数以外の周波数に対しては,電磁波は完全に反射されるが,共振周波数の波は共振器の中へ入っていけるため,ある程度吸収されたり,あるいはもう一つ穴をあけておくとそちらへ透過していくことができる。こうした機能を利用し周波数の較正などに応用される。
執筆者:岡部 洋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報