突張(読み)つっぱる

精選版 日本国語大辞典 「突張」の意味・読み・例文・類語

つっ‐ぱ・る【突張】

[1] 〘自ラ五(四)〙
① 強く張る。伸張する。また、からだなどがかたくなってそりかえる。
落語・妙な艷種(1898)〈四代目柳亭左楽〉「飯を食ふと腹の皮が突張(ツッパ)代りに目の皮がたるんで来るから」
② 強硬な態度で行動する。
浄瑠璃道成寺現在蛇鱗(1742)一「忠臣顔に座を去らず、宮殿につっぱるも合点々々」
青少年などが虚勢をはって、社会に反抗したり不良じみた態度をとったりする。
※父の詫び状(1978)〈向田邦子〉お軽勘平「女は気負い、いま流行りのことばでいえば『突っぱって』いたのかも知れないという気もする」
④ そうしたいという気持がひじょうに強く心にみなぎる。
(イ) (「意地がつっぱる」の形で) 自分の意見を強く押し通そうとする気持がみなぎる。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)二「此子の様な、いぢのつっぱった子はねへよ」
(ロ) (「胸がつっぱる」の形で) 苦しみ、悲しみなどを強く感じる。
※滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)八「わりさまたちのむねのわるなったより、わしのむねがつっぱったわい」
(ハ) (「欲がつっぱる」の形で) ひじょうに強い欲がみなぎる。
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉五「しかし通さんといふ人もふだん欲がつっ張(パ)ッてゐるもんだから」
(ニ) (「業腹がつっぱる」の形で) ひじょうに腹が立つ。
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉初「余(あンま)り強腹(がうはら)がつっぱるから」
⑤ 見張りや客引きなどのために外に立つ。
洒落本・浪花色八卦(1757)菱卦「あるじの女房門口につっはって鼻へ声を入れ顔でまねいて」
[2] 〘他ラ五(四)〙
棒状のものを押しあてて強く支える。また、腕・脚などを伸ばしあてて強く押す。
雑兵物語(1683頃)上「杖をつっはる役だからは」
② 相場で、強引に売りまたは買いを続ける。〔株式商品市場用語辞典〕
相撲で、両腕を同時または交互に伸ばして、平手で相手の胸や肩を突く。
※相撲講話(1919)〈日本青年教育会〉常陸、梅の爛熟時代「太刀の突張(ツッパ)らうとする腕を押へ、右筈で何の苦もなく押切った常陸の」
※漫才読本(1936)〈横山エンタツ〉モグリの大将「双方激しく突(ツ)ッぱって居ります」

つっ‐ぱり【突張】

〘名〙
① つっぱること。ものを押しあてて支えること。つっかい。
※俳諧・桃青門弟独吟廿歌仙(1680)巖翁独吟「長天も地につきにけり庭の雪 氷のはしら風のつっばり」
② 物を支えるために立てる棒や柱など。つっかい棒。
※日葡辞書(1603‐04)「Tçuppariuo(ツッパリヲ) カウ」
③ 青少年などが虚勢をはって、不良じみた態度をとったり、目立ったかっこうをしてみせること。→つっぱる(一)③。「つっぱりグループ」
※TV局恥さらしな日記(1984)〈村野雅義〉オン・エア「たとえ、暴走族であろうと、ツッパリ娘であろうと」
④ 相撲で、両腕を同時または交互に伸ばして、平手で相手の胸や肩を突くこと。〔相撲講話(1919)〕

つい‐はり【突張】

〘名〙 (「つい」は「つき(突)」の変化した語) ものをつっぱるために立てる柱や棒。つっぱり。つっかい。
※虎明本狂言・腰祈(室町末‐近世初)「よひとおもふ時分に、うしろからつひはりをめされひ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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