筋強直性ジストロフィー(読み)キンキョウチョクセイジストロフィー(英語表記)Myotonic dystrophy

デジタル大辞泉 「筋強直性ジストロフィー」の意味・読み・例文・類語

きんきょうちょくせい‐ジストロフィー〔キンキヤクチヨクセイ‐〕【筋強直性ジストロフィー】

筋強直および筋肉萎縮筋力低下に加えて、心臓中枢神経などさまざまな臓器障害が生じる遺伝性疾患成人筋ジストロフィーで最も患者が多い。筋緊張性ジストロフィー。MD(myotonic dystrophy)。

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六訂版 家庭医学大全科 「筋強直性ジストロフィー」の解説

筋強直性ジストロフィー
きんきょうちょくせいジストロフィー
Myotonic dystrophy
(遺伝的要因による疾患)

どんな病気か

 筋力低下を示す代表的な病気で、筋肉以外の眼、心臓、内分泌、脳などの症状も合併することがあります。症状の出る時期・強さから、軽症型、古典型、先天型に分類されています。

原因は何か

 19番染色体にあるDMPK遺伝子内の、3塩基の繰り返しが伸びることが原因です。病気は優性遺伝します。伸び方が大きいほど発症が早く、症状が強いことが知られています。この繰り返しが伸びることが、別の遺伝子(心臓や脳など)のはたらきに影響を与えて、さまざまな症状が出現します。

症状の現れ方

 古典型は、10~30代に、筋肉の力が落ちる、とくに足先、手、首などの筋力が落ち、表情が乏しくなることで気づかれます。手を握ったり、離したりする動作がしにくくなる(時間がかかる)のも特徴です。白内障(はくないしょう)不整脈糖尿病前頭部の髪が抜ける、認知症などの症状を伴うことがあります。

 先天型では、新生児の時から全身の力が弱い、うまく呼吸ができないなどの症状が出るほど、重症の場合もあります。

 軽症型の場合は、成人になってからの白内障や軽い手の症状くらいで、日常生活に支障はありません。

検査と診断

 血液検査で、DMPK遺伝子の3塩基の繰り返しを調べます。先天型では1000回以上、古典型では100~10000回、軽症型では50~150回くらいに繰り返しが伸びています。しかし、繰り返しの数だけでその後の病気の進行具合を予想することはできません。

治療の方法

 筋力低下に対する特別な治療法はありません。リハビリテーションが中心となります。一方、白内障、不整脈、糖尿病に対しては、それぞれに治療法がありますので、専門医に診てもらいます。

病気に気づいたらどうする

 まずは神経内科的な診察を受ける必要がありますので、神経内科のある病院を受診してください。遺伝子検査や遺伝についての疑問があれば、遺伝カウンセリングを行っている医療施設にご相談ください

関連項目

 メンデル遺伝と疾患遺伝カウンセリング

後藤 雄一

筋強直性ジストロフィー
きんきょうちょくせいジストロフィー
Myotonic dystrophy
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 筋ジストロフィーのなかに位置付けられている病気ですが、ほかの筋ジストロフィーとは違い、内分泌異常、心伝導障害、白内障(はくないしょう)などを伴う多臓器疾患です。

原因は何か

 第19番染色体のMPTK遺伝子のなかで、3つの核酸(CTG)の繰り返しが異常に延長して起こる病気ですが、動物実験でこの遺伝子に異常を起こしたマウスでは軽い異常しかみられません。MPTK遺伝子周囲の遺伝子のスプライシング異常を引き起こすことにより、発症するのではないかといわれています。

 常染色体優性遺伝(じょうせんしょくたいゆうせいいでん)疾患なので、男女両性に発病します。通常は30歳くらいで発病しますが、小児期や生後すぐにも発病することがあります。

 とくに、生後すぐに発病するタイプは先天型と呼ばれ、生後まもなく人工呼吸器の装着を要することもあるなど重症なものです。

 最近、筋強直性筋ジストロフィー第2型が注目されています。通常の筋強直性筋ジストロフィーは手足の先の筋を主に侵すのに、第2型では体に近い部位の筋を主に浸します。日本ではごくまれです。第2型ではCTGではなく、CCTGの4つの核酸の繰り返しが増加しています。

症状の現れ方

 進行性の筋力低下とミオトニー症状です。ミオトニーとは、運動したあとに自分の意思で筋肉が弛緩(しかん)できない状態を指します。たとえば、熱いやかんの取っ手をつかんで熱いと感じても手が放せないというような現象が起きます。

 筋力低下は、一般の筋ジストロフィーが主に体幹筋や肩・腰周囲筋に障害が現れるのに対して、この病気では手足の先端が主に侵されます。

治療の方法

 白内障を90%以上の患者さんが併発しますが、眼科的手術によって対処は可能です。糖尿病の合併が多いのも特徴です。この病気における糖尿病の特徴は、重症化しないものの治療に対して抵抗性があるということです。また、心伝導障害のために心臓ペースメーカーの装着が必要になることもしばしばです。

 このタイプでも呼吸障害が起こりやすいので注意を要します。また嚥下障害が早期からみられることもあります。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報