筋肉の細胞が次第に壊れていく遺伝性の病気です。いくつかのタイプがありますが、小児期にいちばん多いデュシェンヌ型筋ジストロフィーについて述べます。
デュシェンヌ型は、幼児期に発症し次第に筋力低下と筋肉の
筋細胞の膜には、収縮や
この遺伝子はジストロフィン遺伝子と呼ばれ、性染色体の上にあります。したがって男性では筋ジストロフィーとして発病しますが、女性は病気の原因はもっていても発病しない保因者となります。
乳児期には明らかな症状はみられませんが、検査をするとすでに筋細胞が壊れている所見があります。3~5歳になると、腰や大腿の筋力低下により、転びやすいとか走るのが遅いなどの症状が出てきます。床から立ち上がる時に、床に手をつきお尻を上げ、次に
なかには病気の進行が遅く、経過の良いベッカー型筋ジストロフィーと呼ばれる軽症のタイプがあります。
血液検査で筋肉由来の酵素(CK、LDH、AST、アルドラーゼ)の値の上昇がみられます。
確定診断は、筋生検(組織をとって調べる)でジストロフィン染色を行って筋細胞にジストロフィンがみられないことを証明することによってつけられます。あるいはジストロフィン遺伝子の異常から遺伝子診断することもできます。
根本的な治療法についての研究が盛んになってはいますが、まだ臨床的に応用されるまでにはなっていません。現在のところ、障害の程度に合わせながら患者と家族の生活の質(QOL)をより良くすることが治療の目標になります。運動機能を維持し、進行を遅らせるためにリハビリテーションや装具の検討をします。呼吸障害や心臓の合併症が出てくれば、症状に合わせた治療が必要になります。
また、保因者の診断や出生前の診断によって、次の世代のことについて遺伝カウンセリングの専門家と十分に相談することも必要です。
突然変異での発病が約30%にみられるので、遺伝がはっきりしていなくても、運動ができなくなったとか筋肉が弱くてふにゃふにゃしているという時には、まず近くの小児科医に診てもらってください。
平松 公三郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
筋肉それ自体に遺伝的な問題があって筋肉が萎縮(いしゅく)し、筋肉の力が弱くなる疾患の総称で、PMD(progressive muscular dystrophy)とも略称される。ジストロフィーとは、栄養状態が悪いとか、成長・発育状態が悪いといった意味をもっている。
PMDは進行性に悪化する。その代表的なものがデュシェンヌDuchenne型筋ジストロフィー症で、頻度がもっとも高く、伴性潜性遺伝で、原則として男子のみに症状が現れる。通常、病気は5歳くらいまでに始まるが、初期には主として腰の筋肉が冒され、腰の力が弱くなる。そのため、出生後初めて立ったり、歩き出す(開始年齢は普通1歳前後)のが遅れること、床からの特有な立ち上がり方(登攀(とうはん)性起立)をすること、腰を振って歩く歩き方(いわゆるアヒル歩行)などによりPMDが発見されることが多い。10歳前後で起立や自力歩行ができなくなり、20歳くらいで心不全、呼吸器感染などにより死亡することが多かったが、近年の医療技術の進歩により、延命が可能となった。
これに対してベッカーBecker型は、発病初期の症状はデュシェンヌ型に似ているが、これは良性であり、発病がやや遅くて進行は緩徐で、天命を全うすることが多い。そのほか、主として顔面、肩、上腕の筋肉が冒される顔面・肩甲・上腕型、腰や肩の筋肉が冒される肢帯型もある。これらはデュシェンヌ型とは遺伝形式も異なり、男女いずれにもみられる。発病が遅くて進行も緩徐である。まれではあるが、瞼(まぶた)が下がり眼球の動きが悪くなる眼筋型、四肢末梢(まっしょう)(手や足)の筋肉が冒される遠位型、母胎内ですでに発病している先天型もある。
特徴のある症状から診断されるが、筋電図、血液の酵素測定(とくにクレアチン・フォスフォキナーゼが高値となる)、筋肉の組織検査(筋生検)などはPMDの診断の助けになる。
PMDの治療には有効な薬剤がないので、生活指導、リハビリテーションによる残された筋肉の機能の活用と維持がたいせつである。
[海老原進一郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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