日本大百科全書(ニッポニカ) 「箱迫」の意味・わかりやすい解説
箱迫
はこせこ
女子和装用装身具の一種。筥迫、筥狭子とも書く。女子の懐中物であった三つ折の鼻紙袋が正装用具としてのち現代と同じ形に変わった。江戸時代中期から、御殿女中、武家婦人の正装の際に用いられ、実用よりも装身具的なものへと変じていった。厚板、金襴(きんらん)、羅紗(らしゃ)、ビロードなどを材料としてつくられ、それに刺しゅうや切付けを施したものが多い。箱迫の胴〆(どうじめ)も本体と同じく細工され、その下に落とし巾着(きんちゃく)がついていて、これを帯に挟んで留める。また箱迫の上部には、びらびら簪(かんざし)を挿すようになっており、これを懐中から外に出して飾りとする。箱迫の中には本来、懐紙を入れるようになっていたが、明治以後はまったく装身具化して、懐紙は入れないことが多い。
現在、箱迫を懐中する機会としては七五三の7歳の帯解(おびとき)の祝いと、花嫁衣装の装身具として用いるくらいである。今日では塩瀬に刺しゅうしたものが多い。
[遠藤 武]