筥迫(読み)ハコセコ

デジタル大辞泉 「筥迫」の意味・読み・例文・類語

はこ‐せこ【×迫/×迫/×狭子】

和装女子が懐に入れて持つ箱形紙入れ江戸時代奥女中武家婦人が正装の際に用いた。現在では花嫁衣装七五三祝い着のときに用いられる。

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精選版 日本国語大辞典 「筥迫」の意味・読み・例文・類語

はこ‐せこ【筥迫・函狭子】

  1. 筥迫〈南紀徳川史〉
    筥迫〈南紀徳川史〉
  2. 〘 名詞 〙 女性懐中にはさんで持つ、金襴羅紗ビロードなどの布製の紙入れ。江戸時代、奥女中や武家中流以上の若い女性が用いたが、今日では、もっぱら礼装時の装飾として用いる。
    1. [初出の実例]「はこせこから目鏡を出してはなへはさむ」(出典:滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)上)

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改訂新版 世界大百科事典 「筥迫」の意味・わかりやすい解説

筥迫 (はこせこ)

江戸時代に女子が懐中して用いた紙入れの一種箱迫,函迫とも書く。近世以後,小袖と帯の発達につれて,帯でしっかりおさえられた衿の合せ目,すなわちふところへ物を入れる習慣が一般に行われるようになり,さげ袋や掛け袋に代わって携帯用のアクセサリーとして筥迫が発達した。筥迫は江戸時代には武家の女性が打掛をつけたときには必ず持つべきものとされていた。筥迫には紙,箸差(はしさし),懐中鏡などを入れ,二つ折りになって,とじ帯に小さい香袋がついている。そのほか若い女性の用いたものには,歩揺ほよう)(びらびら)のついた簪(かんざし)をさし込んだものもある。いわゆる紙入れよりも多分に装飾的なもので,ビロード,繻子(しゆす),ラシャ,ゴロ(呉羅)などに刺繡(ししゆう)を施したものが多く,形も比較的大きくて厚味があり,堅くできている。ふところから少しはみださせて携帯した。今日では七五三の祝着や花嫁衣装の装飾として残っている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「筥迫」の意味・わかりやすい解説

筥迫
はこせこ

和服装飾品で,女性用の紙入れの一種。昔は厚手の色紙を折って,その間に櫛や笄 (こうがい) などをはさんで懐中にしたが,江戸時代に広く流行するに及んで,華麗な織布などが使われるようになった。また袋物としてよりも女性の正装の際に欠かせない装飾品となり,その頃から筥迫と呼ばれるようになった。現在では七五三の女児や婚礼の際の和装の花嫁などの装飾品となっている。

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百科事典マイペディア 「筥迫」の意味・わかりやすい解説

筥迫【はこせこ】

江戸時代,武家の女性などが懐中に入れて用いた紙入れの一種。金襴(きんらん),緞子(どんす),ビロード,羅紗(らしゃ)などに刺繍(ししゅう)を施したものが多く,とじ帯に小さな香袋がつき,簪(かんざし)をさしこんだものもある。紙や懐中鏡などを入れた。現在は婚礼や七五三の衣装用。

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世界大百科事典(旧版)内の筥迫の言及

【装身具】より

…なお江戸中期から後期の簪には,胴の先端に耳かきのついたものが多いのが特徴である。このほか江戸時代を通じて武家の女性が懐中に必ず携えたものに筥迫(はこせこ)がある。紙入れの一種であるが,鏡や簪などが入れられることもあった。…

※「筥迫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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