内科学 第10版 「糖原病VI型」の解説
糖原病VI型 (Hers病)(糖原病(グリコーゲン病))
病因
PYGL遺伝子によってコードされる肝型ホスホリラーゼの遺伝的欠損による疾患で,肝にグリコーゲンが蓄積する.
病態生理
肝型ホスホリラーゼの欠損によりグリコーゲンの分解が障害されるが,糖新生系は保たれるので,低血糖の程度は軽い.筋ホスホリラーゼは正常であるため,筋症状はみられない.肝ホスホリラーゼの活性低下は,ホスホリラーゼの活性化酵素であるホスホリラーゼキナーゼの異常(糖原病Ⅷ型)でも生じ,同様の病態を呈する.発症頻度は,Ⅷ型の方がⅥ型より圧倒的に多い.
臨床症状
乳児期に肝腫大や軽度の低血糖を呈する.しばしば無症状である.
検査成績
軽度の低血糖,肝トランスアミナーゼ高値,脂質異常症を認める.
診断
酵素診断で,肝・赤血球・白血球における総ホスホリラーゼ活性の低下とホスホリラーゼキナーゼの正常活性を確認する(Ⅷ型の否定).補助的に,グルコース,グルカゴン,ガラクトースそれぞれの負荷試験も行われる.
治療
低血糖は軽度で,無治療ないしは頻回の食事で治療可能であることが多い.肝腫大は,年齢とともに目立たなくなり思春期にはほぼ消失する.[松原洋一]
■文献
Kishnani PS, Koeberl D, et al: Glycogen storage diseases. In: The Online Metabolic and molecular Bases of Inherited Disease, (Valle D, Beaudet AL, et al eds). http://www.ommbid.com/OMMBID/the_online_metabolic_and_molecular_bases_of_inherited_disease/b/abstract/part7/ch71
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報