紙漉唄(読み)かみすきうた

日本大百科全書(ニッポニカ) 「紙漉唄」の意味・わかりやすい解説

紙漉唄
かみすきうた

日本民謡分類上、仕事唄のなかの一種目。和紙の製造工程で歌われる唄の総称。工程順に唄が異なる。まず和紙の原料になるコウゾの皮をむくおりに歌う「皮むき唄」、蒸したコウゾの皮を打ち棒でたたいて細かく柔らかくするおりに歌う「紙素(かみそ)打ち唄」、打ち上がったコウゾを漉き船に入っている水とトロロアオイからとった糊(のり)の液体に混ぜ、長時間攪拌(かくはん)するおりに歌う「紙漉唄」(実際に簀(す)で紙を漉くときは歌わない)などである。これらの唄の源流は、いずれも江戸時代末期から明治にかけて大流行をみせた「甚句(じんく)」で、ちょうどこの時代は、甚句を種々の農作業唄に利用したときであり、和紙造りと特別結び付いたものではなく、単調な作業に飽きるため、在来の唄を利用し、口ずさんだだけなのである。

竹内 勉]

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