トロロアオイ(英語表記)sunset hibiscus
Abelmoschus manihot Medic.

改訂新版 世界大百科事典 「トロロアオイ」の意味・わかりやすい解説

トロロアオイ (黄蜀葵)
sunset hibiscus
Abelmoschus manihot Medic.

中国原産のアオイ科多年草で,製紙用ののり原料または観賞用に栽培される。茎は高さ1~2m。葉は長い柄があり,掌状に5~9深裂する。夏から秋にかけて,直径10cmほどの大きな花を,茎の上部にまばらな穂状につける。花は1日花で,黄色。中心部に鮮やかな赤紫色の目が入り美しい。おしべは多数,花柱は5本に分かれ青紫色。蒴果(さくか)は角(つの)形で5稜あり,剛毛があって,熟すと硬くなる。根部は長さ20cmほどの紡錘形に肥大する。根は粘液を多量に含み,打ち砕いて水につけたものを和紙をすくのりとして用いる。広島,神奈川,静岡,埼玉などの各県で栽培され,年間150万kg程度の消費がある。また,外皮をはいだ根を乾燥したものが,黄蜀葵根(おうしよくきこん)である。今日では薬用として用いられることはまれだが,アルテア根代用として,煎剤を,丸薬をねるときのつなぎにする。主成分はペントサンpentosanからなる粘液で,約16%含まれる。本来は多年草であるが,栽培上は一年草として扱う。栽培品種には大熟,チリコブなどがあるが,草丈1mほどの矮性(わいせい)品種が多い。温暖な気候に適し,春に種子をまき,秋に根を収穫する。種子は黒色の小さな球状で,硬実である。近縁オクラは,本種によく似て,若い果実を食用にする。またトロロアオイモドキA.moschatus Medic.はニオイトロロアオイ,ジャコウアオイともよばれ,種子に麝香(じやこう)の香りがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トロロアオイ」の意味・わかりやすい解説

トロロアオイ
とろろあおい / 黄蜀葵
[学] Abelmoschus manihot Medik.
Hibiscus manihot L.

アオイ科(APG分類:アオイ科)の一年草。中国原産。草丈は本来2メートル近くになるが、最近は0.5~1メートルの丈の低い品種が多く栽培されている。葉は互生し、葉柄が長く、掌状に深く裂ける。夏から秋、淡黄色で中心部が濃赤紫色、径15~20センチメートルの5弁花をつける。白花のものもある。花は1日でしぼむが、茎の下位から上位へと順に次々と開く。植物体全体、とくに根に粘質物を多く含み、これを和紙を漉(す)くときの糊(のり)として利用する。また、観賞用ともする。

 6月ころに種子を播(ま)く。糊原料をとるための栽培では、開花・結実させないために、つぼみがついたら先端部を刈り取る。収穫は初冬。連作すると立枯病など障害が多く出るので、輪作する。2016年(平成28)の国内生産量は19.44トンで、茨城県が約87%、埼玉県が10%を占めている。

[星川清親 2020年4月17日]


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百科事典マイペディア 「トロロアオイ」の意味・わかりやすい解説

トロロアオイ

オウショクキ(黄蜀葵)とも。中国原産のアオイ科の一年草。草たけ1〜2m。葉は掌状複葉で5〜9裂し細毛がある。夏,径10〜15cmの黄色の5弁花を開く。観賞用のほか,根の外皮を除いて乾燥したものを黄蜀葵根と呼び,古くから粘滑剤として用いられ,現在ではねりと呼ぶ和紙抄造用糊料として重要。
→関連項目アオイ(葵)オクラ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トロロアオイ」の意味・わかりやすい解説

トロロアオイ
Hibiscus manihot

アオイ科の一年草。中国原産で,根に含まれる粘液を和紙製造用の糊に用いるため,また花が大きく美しいので観賞用にも栽培される。茎は直立し高さ1~2mに達する。葉は互生し掌状に5~9深裂し,裂片は狭長または広披針形であらい鋸歯がある。夏秋の頃,茎の上部の葉脈または頂部にやや総状に花をつける。花は横向きに開き径 15~20cm,花弁は黄色で5枚,底部は暗紫色である。1日花であるが次々に新しい花を開き1株で十数花が咲く。和名は根が粘液を含むのをとろろにたとえたもので,この根は薬用にもされる。

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化学辞典 第2版 「トロロアオイ」の解説

トロロアオイ
トロロアオイ
hibiscus

アオイ科の植物名.学名Hibiscus manihot L.[別用語参照]和紙

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のトロロアオイの言及

【紙】より

…水を張った抄紙槽に入れ,〈紙薬〉をまぜて抄紙簾(すき桁)ですき起こし,簾よりはがして乾燥させる。ここにいう紙薬が何であるかの明記はないが,黄蜀葵(トロロアオイ)などの粘剤を指すものと思われる。抄紙にあたって黄蜀葵を使用することは,明末に方以智が書いた《通雅》にみえている。…

※「トロロアオイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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