日本大百科全書(ニッポニカ) 「素人庖丁」の意味・わかりやすい解説
素人庖丁
しろうとぼうちょう
江戸時代の料理書。著者は浅野高造(こうぞう)で、3巻3冊。1803年(享和3)に第1冊、1805年(文化2)に第2冊、第3冊は15年後の1820年(文政3)に主として大坂で刊行された。内容は、第1冊が四季魚類(鱠(なます)、汁、小煮物、煮物、和(あ)え物、田楽(でんがく)、組肴(くみざかな))、四季精進(しょうじん)(膾、汁、煮物、和え物、取肴(とりざかな))、ひたし物類、吸口(すいくち)類など、以下、魚別料理と作り方、第2冊は雑魚、魚鳥飯、魚類粥雑炊(かゆぞうすい)、精進青物仕様、第3冊は四季混雑、精進酒菜(さかな)のこしらえ様で構成されている。序文に「此(この)書(しょ)は百姓家(か)、町家の素人に通じ、日用手りやうりのたよりともなるべきかと、献立の品々を分かち、俄(にわか)客の折から台所の友ともなるべきと心を用」いた、とある。町人の宴会や料理場の光景、潮干狩、船遊びなど一種の風俗画のような挿絵が多い。
[小柳輝一]