改訂新版 世界大百科事典 「紺搔」の意味・わかりやすい解説
紺搔 (こうがき)
藍染を業とする紺屋のこと。はやく《源平盛衰記》に〈彼首ハ東ノ獄門ノ前ノ樗木ニ係タリケルヲ,紺五郎ト云紺搔ノ有ケルガ〉とみえ,また中世に成立した各種の職人歌合にもその名がみえる。室町期の《諸芸方代物附》によると,紺屋の染代は〈あさき(浅黄色)は百二十文,ひやうもんは百五十文,二ゑ(重)物かちんましり三百文,まき八百,或は一貫〉とあって,他の染物よりは安価であったようだ。紺搔は都市において多く成立したが,中世には荘園内に給田を与えられるものもあり,領主経済の中において,一定の役割を果たしていた。なお《嬉遊笑覧》は,18世紀初頭までこの職種が女性によって占められていたとし,また職人歌合も女性を描いていることから,女性の代表的な職業であったことが知れる。
執筆者:川嶋 将生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報