染物(読み)ソメモノ

デジタル大辞泉 「染物」の意味・読み・例文・類語

そめ‐もの【染(め)物】

布などを染めること。また、染めた布。
結婚して女が歯に鉄漿かねをつけて黒く染めること。
「かがみ見て―をするはづかしさ」〈柳多留・一〇〉
[類語]染色染め付け着色捺染型染め

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精選版 日本国語大辞典 「染物」の意味・読み・例文・類語

そめ‐もの【染物】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 布帛を染めること。また、その染めた物。
    1. [初出の実例]「ごたち、物裁つ。そめものせらるる」(出典:宇津保物語(970‐999頃)嵯峨院)
  3. 女が結婚して歯に鉄漿(かね)をつけること。
    1. [初出の実例]「かがみ見てそめものをするはつかしさ」(出典:雑俳・柳多留‐一〇(1775))

しみ‐もの【染物】

  1. 〘 名詞 〙 部分的に液などがついてできた汚れ。しみ。
    1. [初出の実例]「しみ物などは、とりわき灰汁(あく)をもそへ、水をも含みて懃(ねんごろ)にすすがざれば落ちざるが如し」(出典:米沢本沙石集(1283)四)

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百科事典マイペディア 「染物」の意味・わかりやすい解説

染物【そめもの】

染料を用いて染めた織物。織る前の糸を染める先染(さきぞめ)物と,織り上がった布を染める後染(あとぞめ)物に大別され,それぞれ無地染模様染とに分けられる。模様染には,布地に色を加えて形を表す描(かき)染,型染,摺(すり)染と,防染法を用いて布の一部に染料が染めつかないようにする絞染板締絞,蝋纈(ろうけつ)染などがあり,両者が併用されることも少なくない。日本では正倉院の染織品に描絵,摺絵や,絞染,板締絞,蝋纈染にあたる纐纈(こうけち),【きょう】纈(きょうけち),臈纈(ろうけち)などが残っている。室町〜桃山時代には絞染を主とした辻が花染が行われた。江戸時代には染色技術は飛躍的な発展を遂げ,絞りでは疋田絞のような精巧なものが作られ,型染では小紋中形(ちゅうがた)などが行われた。また描染では画期的な友禅が創始され独特の多彩な絵模様が完成された。

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改訂新版 世界大百科事典 「染物」の意味・わかりやすい解説

染物 (そめもの)

植物性,動物性,合成などあらゆる繊維でつくった織物,編物などを浸染(しんせん),その他の方法で染めたもの。無地染と文様染に大別される。無地染は織物,編物を材質にしたがってさまざまな方法で精練あるいは漂白した後,手染または機械を用いて浸染,引染,吹染,パッティング染または媒染などの法によって色無地に染めたものをいう。織物発生後まもなく行われたと考えられ,世界各地で長い歴史を保ちつづけている。文様染の種類と方法はきわめて多い。技法的に大別すると,(1)直接に文様を印花する法,(2)文様を防染して浸染する法,(3)織物を無地染し文様を化学的に抜染する法,(4)その他,ぼかし染,吹染,墨流し染などの法である。(1)には筆やはけなどで文様を描く描絵,描更紗と各種の型(型紙,木型,銅型,スクリーン型など)を用いるものがある。(2)には溶融した蠟類を用い,手描きや型によって防染する﨟纈(ろうけち)法,絞染(しぼりぞめ)法,纈(きようけち)法(板締法)などがある。これら染物の歴史,技術,理論については〈染色〉の項目を参照されたい。
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事典 日本の地域ブランド・名産品 「染物」の解説

染物(筒書き)[染織]
そめもの(つつがき)

中国地方、鳥取県の地域ブランド。
米子市で製作されている。筒書染めとは、渋紙の筒に、餅粉などでつくった染めを防ぐ糊を入れ、筒の先から糊を押し出して布に模様の輪郭を描く技法。大漁旗や風呂敷がつくられる。鳥取県郷土工芸品。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「染物」の意味・わかりやすい解説

染物
そめもの

染色

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世界大百科事典(旧版)内の染物の言及

【染色】より

… 直接染料による木綿の染色の実例を次に示す。繊維重量の1~8%の直接染料,ボウ硝Na2SO4・10H2O10~40%,浴比(可染物重量に対する全染液容量)1:20~1:40の染浴をつくり,あらかじめ精練漂白した木綿を入れ,室温からゆっくり昇温して沸点近くで30~40分染色し,水洗,乾燥して完了する。反応染料による木綿染色は,セルロースのOH基と染料分子が共有結合をつくるため湿潤堅牢度が著しく高く染法も簡便であるので,今日最も重要なセルロース系繊維の染色法となった。…

※「染物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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