改訂新版 世界大百科事典 「経営代理制度」の意味・わかりやすい解説
経営代理制度 (けいえいだいりせいど)
Managing Agency System
インド,マラヤなどイギリス植民地において独特な企業経営システムとして発展した制度。この制度の下では,企業家は会社を発起し出資するにとどまらず,さらに進んで,この会社との間で,いわゆる経営の代理契約を結ぶ。そして経営代理人という資格でこの会社の経営いっさいをとりしきり,代価として手数料を徴収する。契約では,ふつう代理期間が長期に定められ,手数料も高率の出来高手数料として契約される。企業家は代理契約という便法を講じることにより,会社経営権の半世襲化と手数料名目での会社利益の吸収とを,同時に保証されるのである。カルカッタ,ボンベイ,シンガポールなど植民地港口に跋扈(ばつこ)したイギリス人の大手企業家たちは,いずれもこの制度によって多数の企業をおのおのの傘下に収め,ジュート工業,石炭業,紅茶やゴムのプランテーションをはじめとする一次産品関連産業において寡占的支配を維持することができた。この制度が最初に撤廃されるのは1970年のインドにおいてであった。
執筆者:小池 賢治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報