翻訳|plantation
17,18世紀以降に,先進資本主義国列強によって世界的に植民地化が進む過程で,熱帯・亜熱帯アジア,アフリカ,ラテン・アメリカなどの地域を中心に形成された大土地所有に基づく単一作物企業農園であり,栽植農園と訳されることもある。その成立の契機は,資本主義国貿易商はそれぞれの植民地の特産物,嗜好品,果実などを買い入れて本国へ輸入し,大きな利益をあげていたが,開発輸入によりさらに利益を増大させるために,大規模な直営農場を植民地で経営しはじめたことにあった。その特色としては,(1)作物は綿花,葉タバコ,サトウキビ,パイナップル,バナナ,コーヒー,カカオ,ゴム,茶,キナ,ココヤシ,アブラヤシ,稲などの熱帯・亜熱帯性作物である,(2)栽培方法は,1種類の作物を大規模に栽培する単一耕作(モノカルチャー)が普通である,(3)経営形態は植民地の本国などからの資本企業者による農企業経営であり,広大な土地に巨額の資本を投下し,近代的な設備・機械・技術を用いた資本制大規模農場であるが,労働力は低賃金の現地人や移住民を雇用したものが多かった,(4)産物は本国等へ輸出される輸出商品である,などであり,プランテーションの立地も交通輸送に便利な熱帯・亜熱帯の沿海地域に多く分布している。このようなプランテーションは,第2次大戦後の植民地の独立によって性格がかなり変化したり,また植民地以外の地域(南米ブラジルなど)で独自の発展をみせてはいるが,その大規模モノカルチャー企業農園的な基本性格は残されている。
プランテーションの典型的な立地・品目としては,18~19世紀のアメリカ南部の綿花,葉タバコ,キューバの砂糖,コーヒー,葉タバコ,マレーシア,インドネシアなどの東南アジア諸国のゴム,インド,スリランカの茶,ブラジルをはじめ中米やアフリカのコーヒー,ガーナ,コートジボアール,ナイジェリアなどのアフリカ諸国とブラジルのカカオ,カリブ海諸国(ホンジュラス,コスタリカ,ジャマイカ,コロンビア,エクアドル)のバナナなどがある。これらのプランテーションの多くが植民地時代に始まっており,第2次大戦後に独立を達成した時期に,経営が国有化されたり(インドネシア,キューバ),ブラジルなどのように独自の道を歩んだ場合もあるが,それぞれの国情と歴史的条件のなかで特色ある発展をみせている。そこでその名称も,マレーシアやインドネシアの〈エステートestate(企業農園)〉,ブラジルの〈ファゼンダfazenda〉などのように,独自の呼名をもっている場合もある。その成立する契機と特色からも明らかなように,プランテーション経営は前近代的な労働力雇用と資本制大規模農企業経営として発展し,生産物は輸出を目的としているため,各国は独立達成後もその国民経済は旧支配国からの自立が困難な場合もあり,経済的に従属性を払拭しきれないままになっていることが多い。独立によりいちおう政治的にはかつての帝国主義的植民地支配からは脱却しても,経済的自立にはなお時間を要する地域もあり,各国はその自立達成に向けて努力している。プランテーション諸国では資本家と労働者の階層格差が大きく,社会階層構成としても問題がある。
→植民地
執筆者:河野 敏明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
資本主義の成立期である本源的蓄積期に近代植民制度の一環として始まり、帝国主義段階に入って、とりわけ19世紀の後半以降急速に発展した大土地所有に基づく大規模農園のこと。栽植農園、栽植制度などと訳されている。東南アジアやラテンアメリカ、アフリカなど、熱帯や亜熱帯の植民地・半植民地に広く存在し、茶、コーヒー、ココア、サトウキビ、パイナップル、ゴム、綿花など、本国では栽培できないか、できても有利に栽培できない作物を栽培した。
このプランテーションでは単一作物の栽培が行われたが(これをモノカルチュアという)、それは植民地や半植民地の人々が現地で消費するために栽培されたのではなく、本国など、いわゆる「先進国」に輸出するための商品として栽培されたのである。このようにプランテーションでは利潤を目的に商品としての作物が栽培されたのであるが、そこで働く人々の労働条件は非常に劣悪であり、とうてい近代的な資本=賃労働関係が成立していたとはいえない。これは、プランテーションの一典型ともいえるかつてのアメリカ合衆国南部の場合を想起すれば容易に納得のいくところであろう。
さて、このようにプランテーションでは単一作物が商品として栽培されたわけであるが、このことが植民地や半植民地の経済に与えた影響は重大である。なぜなら、もともと現地の必要性によって始められたのではないプランテーションの普及により、現地の自然経済的な経済構造が重大な打撃を受けたからである。そしてモノカルチュア的ないびつな経済構造が定着していくことにより、植民地や半植民地であった地域がバランスのとれた経済発展を遂げることを困難にしたからである。この点は今日までそれらの地域の発展を制約する要因となっている負の遺産であるといわなければならない。
[沢田幸治]
『R・スタベンハーゲン著、山崎春成他訳『開発と農民社会』(1981・岩波書店)』▽『A・フランク著、吾郷健二訳『従属的蓄積と低開発』(1980・岩波書店)』▽『鶴見良行著『アジアはなぜ貧しいか』(1982・朝日新聞社)』
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熱帯,亜熱帯地方で輸出向けの農作物の単一栽培にあたる大規模農園。18世紀に列強による植民地開拓とともにカリブ海域,アメリカ本土に出現し,19~20世紀には中南米,アフリカ,熱帯アジアに広がって,サトウキビ,綿花,コーヒーなどの嗜好品,工業原料を産出した。現地住民のほか奴隷などの不自由労働を酷使して,生産にあたり,利潤は土地所有者である本国にもたらされて,植民地の従属に拍車をかけた。第二次世界大戦後の植民地解放後も,経済的な自立を妨げる要因となっている。
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出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…しかし,重層的家族意識は現代でも広く認められる。【後藤 晃】
【ラテン・アメリカ】
アルゼンチンなど白人が人口のほとんどを占める地域を除けば,ラテン・アメリカは,インディオの人口密度が高く,その伝統的文化の強い中米からアンデスにまたがる高原地帯と,熱帯作物の単一栽培と黒人奴隷の子孫の存在に特徴をもつカリブ海全域からブラジルにかけてのプランテーション地帯に大別されうる。長い植民期を通じて両地域は,アシエンダ,ファゼンダなどと呼ばれる大土地所有制に基づいた農業経営単位を巡って構造化が進み,それぞれが社会のおもな構成単位をなしていた。…
…しかし,その生産が急増し,ヨーロッパ人の食生活に決定的な影響を与えるようになったのは,16世紀に新世界の植民地が開発されて以来のことである。すなわち,16世紀にはまずポルトガル領のブラジルにサトウキビ・プランテーションがひらかれ,ついで17世紀にはオランダ人の手によって,イギリス領西インド諸島のバルバドスやネビスに移植される。砂糖は,いかなる土地においても人々の嗜好(しこう)に合致する典型的な世界商品=換金作物として,熱帯植民地の最大の生産物となったのである。…
… しかしこの初期の膨張は,一度きりという征服が本来的にもつ限界に直面し,とりわけアメリカ植民地においては1000万人以上ともいわれる原住民人口減少の結果,労働力が枯渇し,それが植民地の構造変化の契機となった。こうして初期の植民地は,プランテーション植民地(カリブ海地域,ブラジルなど)と白人移住植民地(北アメリカ)という2種類の新しい植民地形態に転化する。この両タイプの植民地の成長は,製造工業品需要を大幅に増大させ,産業革命の勃興をうながす力となった。…
…当時の植民地経済は米に対する需要を急増させた。こうした国際経済の動きに反応して,巨大な米プランテーションの場として登場してくるのがデルタである。デルタ開発は,湛水と乾燥の交互する大草原に運河網を張りめぐらすという方法によって行われた。…
…10~11世紀ころの記録によると,奴隷の〈原産地〉は南ロシアから,遠くはシベリア南部にまで及んだが,彼らはまずアム・ダリヤの下流のホレズムに集められ,ついでイラン北西部のニーシャープールに運ばれて,そこで取引され,イスラム圏の各地に売られていったという。【清水 睦夫】
【近代】
近代の奴隷貿易はほとんどもっぱら,大航海時代以降,主として新世界に開かれた広大な植民地におけるプランテーション経営のために,アフリカ西海岸から行われた黒人奴隷供給のことである。 15世紀以来,アフリカ西岸に拠点を築いたポルトガルは,この地で得た黒人を奴隷として使うようになった。…
…クリオーリョと呼ばれる植民地生れのスペイン人とペニンスラールと呼ばれるヨーロッパ生れのスペイン人は法的には平等であったが,実際にはクリオーリョは植民地時代全般を通じてペニンスラールと区別されて,教会関係や行政上の高位の官職や大規模な交易からは除外されていた。しかし,クリオーリョは鉱山,プランテーション,牧畜などでしだいに富を蓄え,それにともないペニンスラールに対する憎しみも激しくなっていった。植民地上層階級内部におけるこうした対立はクリオーリョによる独立戦争を惹起させる最大の原因となった。…
※「プランテーション」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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