経済学批判(読み)けいざいがくひはん(その他表記)Zur Kritik der Politischen Ökonomie

日本大百科全書(ニッポニカ) 「経済学批判」の意味・わかりやすい解説

経済学批判
けいざいがくひはん
Zur Kritik der Politischen Ökonomie

マルクス著。1859年刊。独自の経済理論体系について執筆した、膨大な草稿経済学批判要綱』(1857~58)に基づいて、その第1分冊として出版された。このなかでは、商品と貨幣が検討されており、商品の二面性、労働の二重性、貨幣の本質や諸機能などが明らかにされ、価値や貨幣に関する諸理論の検討が行われている。その後、第2分冊以降に予定されていた「資本」に関する章の出版計画は変更され、『経済学批判』の内容も含めて、『資本論』へと再構成されることになった。この『経済学批判』につけられた「序言」では、経済学のプランが示され、さらにマルクスの経済学研究の歩みと、「導きの糸」としての唯物史観の簡潔な説明が行われていて有名である。

[重田澄男]

『武田隆夫・遠藤湘吉・大内力・加藤俊彦訳『経済学批判』(岩波文庫)』『杉本俊郎訳『経済学批判』(大月書店・国民文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の経済学批判の言及

【アジア的生産様式】より

…マルクスは《経済学批判Zur Kritik der politischen Ökonomie》(1859)の序言の中で〈アジア的・古代的・封建的および近代ブルジョア的生産様式が経済的社会構成のあいつぐ諸時期〉であるといっている。しかしマルクスはアジア的生産様式の内容についてほとんど説明していないので,その理解をめぐって論争が続いている。…

【資本論】より

K.マルクスの主著で,社会主義に〈科学的〉な基礎を与えたとされる著作。原題を直訳すれば《資本――経済学批判》である。資本制的な生産,流通,分配のしかたを研究して,資本主義社会の経済的な,編成および運動法則を明らかにし,そこから社会主義革命の必然性(=社会主義体制の優越性)を証明しようとした。…

【マルクス】より

…そこで,マルクスは,52年以後しばらく組織的活動から身をひき,アメリカで発行されていた在米ドイツ人向けの進歩的新聞紙上などで時事的な政治・経済評論を行うかたわら,永年の懸案であった経済学の研究に復帰することになった。57年から翌年にかけてかなりまとまった草稿《経済学批判要綱》を作成,59年には《経済学批判》第1分冊をようやく刊行,ひきつづき続刊のための研究と執筆を続けたが,63年ころには《資本論》という新しい著作の構想が固まってきた。 ところで,64年には,チャーチスト,プルードン主義者,バクーニン主義者など思想的には雑多であるが,とにもかくにも国際的な労働者運動の連帯組織〈国際労働者協会〉(いわゆる〈第一インターナショナル〉)が結成され,旧共産主義者同盟系の在ロンドン亡命者グループもこれに参加することになった。…

※「経済学批判」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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