…すでにプラトンが,間接的な識別知としての〈ディアノイアdianoia〉の上位に,問答法ないし弁証法によって到達されるべき一種の直覚知を置き,それ以来,感覚的臆見,間接的識別知,直覚知という三分法は,西欧の思考の歴史において広く行われてきた。フィヒテの〈知識学〉やヘーゲルの〈絶対知〉にいう知ないし知識は,この伝統をふまえて,識別知と識別以前ないし識別を超えた直覚知にいわばあいわたる微妙な位置を占めている。この高次の知は,たとえばベルグソンになると,動物の本能にも比せられる〈直観〉として,直覚的性格をふたたびあらわにするが,それが近代実証科学の目覚ましい成果に幻惑され,識別的知識と安易に短絡されると,人間をかつての神に代わって自然を支配すべきものの位置におく悪しき意味での人間中心主義ないし主体主義の哲学を生むことになる。…
※「絶対知」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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