総合周産期母子医療センター(読み)ソウゴウシュウサンキボシイリョウセンター

デジタル大辞泉 の解説

そうごう‐しゅうさんきぼしいりょうセンター〔ソウガフシウサンキボシイレウ‐〕【総合周産期母子医療センター】

周産期母子医療センター

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

知恵蔵 の解説

総合周産期母子医療センター

重症妊婦新生児に高度医療を提供する医療機関。従来、妊婦は産科、新生児は小児科という区別があったが、特に出産リスクの高い妊婦の場合、母体と新生児を切り離して考えることでさらにリスクが高まる可能性がある。このようなことを防ぐため、母子一体の医療を提供しようというのが総合周産期母子医療センターだ。1996年から国の方針によって各都道府県で整備が進められ、2008年8月現在、山形県と佐賀県を除く45都道府県に75施設ある。総合周産期母子医療センターに近い医療体制を持つ地域周産期母子医療センターまで含めると、300カ所を超える。
総合周産期母子医療センターの治療対象となるのは、重度の妊娠中毒症や前置胎盤など出産前から母体管理が必要な妊婦、あるいは切迫流産早産などで緊急治療を要する母子。日本は乳児死亡率が1000人当たり2.6人と世界で最も低い水準にあり、この分野ではかなり高レベルな医療を誇っていると言えるが、一方未熟児割合が20年前の5%台から10%近くに上昇している現状もあることから、同センターのような医療体制の充実がますます求められている。
同センターは都道府県の指定によって決められ、新生児集中治療室(NICU)が9床以上、母体・胎児集中治療管理室(MFICU)が6床以上あることなどが指定の条件となる。365日24時間体制で患者を受け入れられるよう、産科医が複数人いること、新生児担当の医師が常時いること、必要に応じてドクターカーを整備することなどが国の指針に盛り込まれている。
日本の救急医療はその役割によって、診療所・クリニック(一次医療)、地域の救急病院(二次医療)、高度医療が可能な救急救命病院(三次医療)に分かれており、診療所や地域の病院では治療が難しい重篤患者が発生した場合は、三次医療を担う医療機関に搬送されることになる。総合周産期母子医療センターはこのうちの三次医療機関。妊婦や新生児の命を救う「最後の砦」とも言われている。
しかし、08年10月、脳内出血の疑いがある東京都内の妊婦が、同センターに指定された病院を含む8病院に救急搬送の受け入れを拒否された末に死亡する、という事象が発生。これを機に、産科医不足などによって総合周産期母子医療センターが機能不全に陥っている事態や、ベッドが常に満床で新患者を受け入れる余裕がないことなどが明らかになり、「最後の砦」が危うい状況にあることが露呈した。また、空きベッドのある搬送先をコンピューター端末で即座に探し出せる「周産期母子医療センターネットワークシステム」も整備が進められているが、急患対応のため病院側での情報更新が遅れる、といった新たな問題も浮上している。

(高野朋美 フリーライター / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

妊娠・子育て用語辞典 の解説

そうごうしゅうさんきぼしいりょうせんたー【総合周産期母子医療センター】

母体・胎児集中治療室(MFICU)や新生時集中治療室(NICU)などを備えた病院。合併症妊娠や重い妊娠高血圧症候群、切迫早産など、母児のリスクの高い妊娠に対応できる病院。これに準じた病院を「地域周産期母子医療センター」と呼びます。1996年より整備が進み、2019年4月時点では「総合」「地域」合わせて全国で400以上の施設があります。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

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