繰上(読み)くりあげる

精選版 日本国語大辞典 「繰上」の意味・読み・例文・類語

くり‐あ・げる【繰上】

〘他ガ下一〙 くりあ・ぐ 〘他ガ下二〙
① 次第に上の方におくりあげる。また、順に次へ送る。⇔繰り下げる
※玉塵抄(1563)二二「下(しも)から上へくりあげつなどして礼儀のしなの多をあつめしるし」
※大道無門(1926)〈里見弴白夜「締め切って了った窓を、一枚だけカラカラと繰(ク)りあげた」
② 長く垂らした糸や縄などを、たぐり上げる。⇔繰り下げる
※私聚百因縁集(1257)六「縄を綣挙(クリアゲ)一人帰り給はん事労(いたまし)也」
軍勢などを、少しずつ引き上げる。くりびきにする。
上井覚兼日記‐天正一〇年(1582)一一月二五日「彼境端村等は悉繰挙候条、城責之外は御働有かたき由聞得候」
期日などを予定よりも早くする。⇔繰り下げる繰り延べる
※落語・鉄拐(1890)〈禽語楼小さん〉「お手間は決して取らせません。時間も成丈(なるた)け繰上げて」
⑤ ある物のはんぱをなくすために、補足してきちんとした数量にする。
加え算で、ある位の数の和が二桁になったとき、一つ上の位に一を加える。⇔繰り下げる

くり‐あが・る【繰上】

〘自ラ五(四)〙
① 次第に上方へ持ち上がる。また、順に次へ送られる。
※俳諧・七柏集(1781)貢もの奉ける序、八丈の風宜、予が草扉を訪らはれけるに、〈略〉すみだ川に棹さしける折から「操上る自在の五架茶煮こぼれ〈石意〉 人をちからに冬の蛼〈石髪〉」
順序が早くなる。期日などが予定より早くなる。
※春の城(1952)〈阿川弘之〉一「それぞれ卒業が繰上がるとの事であった」
③ 加え算で、ある位の数の和が二桁(けた)以上になったとき、一つ上の位に一が加わる。

くり‐あげ【繰上】

〘名〙
① くりあげること。
苦心学友(1930)〈佐々木邦〉学校とお屋敷「『田代先生が休みだぞ』〈略〉『繰(ク)り上(ア)げにして来い』〈略〉『駄目だよ。橋本先生が補欠に来る』」
芝居で、せりふ調子を掛け合いでだんだんせり上げていく型。互いに「さあさあさあ」と詰めより、最後一方相手をきめつけること。また、そのような場面。〔南水漫遊拾遺(1820頃)〕
③ (②から転じて) のっぴきならない場合をさす言葉

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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