置露の(読み)おくつゆの

精選版 日本国語大辞典 「置露の」の意味・読み・例文・類語

おくつゆ‐の【置露の】

[1] 〘連語〙 序末にあって上に連用修飾をともない、比喩的に下の語を引き出す。
① 露がすぐ消えるところから、「消ゆ」につづく。
万葉(8C後)八・一五六四「秋づけば尾花が上に置露乃(おくつゆノ)消ぬべくも吾(あ)は思ほゆるかも」
② 露が白くはっきりしているところから、「いちしろし」にかかる。また、「色」にもつづく。
※万葉(8C後)一〇・二二五五「わが屋前(やど)の秋萩の上に置露(おくつゆの)いちしろくしも吾れ恋ひめやも」
③ 露がかかる意で「かかる」につづく。
※続拾遺(1278)恋三・八九三「君によりくれまつ草にをく露のかからぬ程はいかが頼まん〈左近〉」
④ 露が玉をなすところから、「玉」と同音の「たま」を含む語句につづく。
※二度本金葉(1124‐25)恋上「心ざしあさぢが末におく露のたまさかにとふ人はたのまじ〈藤原忠通〉」
⑤ 露が干(ひ)る意で、「干る」と同音の「昼」につづく。
※風雅(1346‐49頃)恋四・一二八三「秋なれば萩の野もせにをく露のひるまにさへも恋しきやなぞ〈光孝天皇〉」
⑥ 草葉の露が散るさまなどから、「遅れ先立つ」「乱る」「余りてよそに飛ぶ」などにつづく。
※新古今(1205)雑下・一八四九「風はやみをぎのはごとにおく露のおくれさきだつ程のはかなさ〈具平親王〉」
[2] 歌のはじめに用いられる。
① 露がかかるというところから、「掛かる」と同音の「かかる(「かく有る」の変化したもの)」にかかる。
※後撰(951‐953頃)恋二・六九八「をくつゆのかかる物とはおもへどもかれせぬ物はなでしこはな源庶明〉」
② 露がはかなく消えるところから、「あだ(はかないの意)」と同音の地名「あだ」にかかる。
※続後撰(1251)秋中・三八〇「おくつゆのあだのおほののまくづはらうらみがほなる松むしのこゑ〈後鳥羽院〉」
③ 露が球状であるところから、「玉」と同音を含む地名「たまつくり」にかかる。
※玉葉(1312)恋一・一三〇四「置く露の玉つくり江にしげるてふ蘆の末葉の乱れてぞ思ふ〈藤原実氏〉」
④ 露が深いというところから、「深」と同音を含む地名「ふかくさ」にかかる。
※続千載(1320)秋下・四七五「をく露のいとど深草里はあれて月のすむ野と成にける哉〈後醍醐院少将内侍〉」

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