改訂新版 世界大百科事典 「羅漢図」の意味・わかりやすい解説
羅漢図 (らかんず)
釈迦が涅槃のとき,正法を付嘱され,この世にとどまって正法を護持することを命じられたという羅漢の像は,中国,日本などで絵画や彫刻にあらわされた。その絵画化は中国の六朝時代に始まっているが,唐時代に玄奘(げんじよう)によって《法住記》が訳出され,十六羅漢の名称,所在地などが明確となり,信仰が始まった。その後,仏教の教主釈迦への信仰が,法身から実在の釈迦へと移り変わるにつれて,羅漢信仰は盛んとなり,中国では宋以後,日本では平安時代以降,十六,十八,五百羅漢などのおびただしい作品が描かれ,現存遺品も数多い。羅漢の像容には一定のきまりはなく,主として顔の表情から禅月様,李竜眠様に大別されているが,そのような分類では律しきれない変化形式が生まれている。遺品では北宋時代の十六羅漢図(京都清凉寺),南宋時代の五百羅漢図(京都大徳寺,ワシントン市フリーア美術館,ボストン美術館)などが代表的な作品である。
執筆者:海老根 聰郎
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