意識的に肺が出し入れすることのできる空気の最大量をいう。肺の容積を表す指標で、肺活量は呼吸運動に関する筋機能(肋間筋(ろっかんきん)や横隔膜)に影響される。肺は横隔膜と胸壁からできている胸腔(きょうくう)内にあり、胸腔容積の変化によって肺は他動的に膨らんだりしぼんだりする。このようにして肺は空気の出し入れを行っている。胸腔容積を変えているのが、横隔膜と肋間筋で、これらは呼吸筋とよばれている。普通の呼吸(1回呼吸気量)から思い切り息を吸い込み(予備吸気量)、ついで吐き出せる限りの息(予備呼気量)を吐き出したときの全呼吸気量を肺活量としている。肺活量は身長、性別、年齢、姿勢などによって異なる。成長とともに胸郭が広がるため、肺活量は大きくなり、臥位(がい)よりも立位のほうが大きくなる。肺活量の推測正常値(18歳以上成人)は以下の公式より算出される。男性={27.63-(0.112×年齢)}×身長、女性={21.78-(0.101×年齢)}×身長。
推測正常値を100%としたときの実際の肺活量をパーセント(%)肺活量といい、パーセント肺活量は100%が正常であり、80%以下になると異常である。肺活量は肺の換気能力を示すことから肺の機能検査に用いられている。ゆっくりとできるだけ多く吐き出させて測定する呼気肺活量とできるだけ早く一気に吐き出させて測定する努力肺活量があり、努力肺活量のうちで最初の1秒間に吐き出される量を1秒量といい、1秒量の努力肺活量に対する割合を%で表したものを1秒率とよぶ。同じ肺活量であってもそれを早く吐き出せるかどうかにより肺機能は変化する。これらの検査はスパイロメーターなどによって測定されている。
[依田珠江]
『本郷利憲・廣重力・豊田順一監修『標準生理学』第6版(2005・医学書院)』
呼吸機能を表す指標の一つ。深呼吸によって吸った吸気を最大呼出した呼吸量(空気量)で示される。通常の1回呼吸量は500mlくらいであるが,深呼吸により2l近くの予備吸気量をもち,予備呼気量としては,通常呼吸時の呼気位の状態からさらに1.5lくらいの呼気量がある。肺活量は,この予備呼気量までの最大呼気量で,成人男子では約4.5l,女子では約3lである。この肺活量は体力測定項目の一つとしてあげられ,性別,年齢,体格などによって異なる。年齢的推移は20歳代前半まで急激に増大し,その後,漸減する。また呼吸機能の評価に,最大吸気状態からできるだけ速く呼出する時間肺活量が有用とする指摘もある。この場合,1秒間の呼出量が肺活量の75%以上(1秒率)であるものを正常とする。気管支や肺の炎症,肺表面の活動が制限される疾患がある場合には肺活量や時間肺活量は小さくなる。
→呼吸
執筆者:大西 徳明
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…呼吸筋として横隔膜がおもに働く場合を腹式呼吸,肋間筋が主体となる場合を胸式呼吸というが,自然の呼吸運動では両方が共存している。おおよそ,肺活量の2/3が横隔膜の運動に,1/3が胸郭の運動によっている。男子では女子に比べて腹式呼吸の割合が大きく,とくに高齢者ではこの割合がさらに大きくなるが,これは加齢による胸郭の伸展性の減少のためと考えられている。…
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