改訂新版 世界大百科事典 「過敏性肺臓炎」の意味・わかりやすい解説
過敏性肺臓炎 (かびんせいはいぞうえん)
hypersensitivity pneumonitis
真菌の胞子や細菌などを含む有機塵埃(じんあい)や,動物性異種タンパク質を反復して吸入した結果,それらが抗原となり,主として肺胞領域にアレルギー反応をおこす一群の疾患の総称。組織学的には瀰漫(びまん)性肉芽腫性間質性肺炎の型をとる。外因性アレルギー性肺胞隔炎ともいう。労働環境,原因抗原の違いにより固有病名が命名されており,現在約20種を数える。その代表例である農夫肺(農夫症)は農業従事者にみられ,サイロの乾草に繁殖した好熱性放線菌類の胞子が原因である。ほかに,サトウキビ肺,キノコ栽培者肺,コルク肺,パルプ職人肺,鳥飼育者肺,洗剤工場労働者肺などがある。これらはいずれも職業病の一つであるが,非職業的なものに加湿器肺,夏型過敏性肺臓炎,緑膿菌過敏性肺臓炎などがある。症状は,急性型では悪寒・発熱,咳,呼吸困難,ときに血痰が出,慢性型では咳,息切れ,全身倦怠感,体重減少が徐々に出てくる。胸部X線写真では肺全体に散布性粒状・網状影がみられる。確定診断は原因抗原の検索による。治療は,原因抗原からの隔離と,副腎皮質ホルモンを使用する。
→アレルギー →肺炎
執筆者:伊藤 新作
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報