過敏性肺臓炎(読み)かびんせいはいぞうえん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「過敏性肺臓炎」の意味・わかりやすい解説

過敏性肺臓炎
かびんせいはいぞうえん

真菌胞子および鳥類の血清タンパクや排泄(はいせつ)物、その他の異種タンパク抗原などを含む有機塵埃(じんあい)の反復吸入により感作された個体が、再度の同一抗原吸入によりおこす肉芽腫(しゅ)形成を伴う間質性肺炎である。外因性アレルギー性肺胞炎ともいい、Ⅲ型およびⅣ型アレルギー反応により生ずる。ほし草やサトウキビの真菌胞子による農夫肺症、サトウキビ肺症のほか、鳥飼育者肺症、加湿器肺症、空調病など多種のものがある。わが国ではまだ原因抗原が確定されていないが、夏に発病する夏型過敏性肺臓炎が多い。

 原因抗原暴露から数時間後に咳(せき)、呼吸困難、発熱、悪寒、筋肉痛などが現れ、聴診器によって捻髪(ねんぱつ)音、小水泡性ラ音が聴取される。胸部X線像はすりガラス状を呈する。抗原から遠ざかれば症状は数日で消退するが、再暴露の機会があればまた発症する。長期にわたり抗原に暴露されていると、肺線維症にまで進展する。

 治療は、原因抗原への暴露を回避することが原則である。職業的なものでは転職が必要となることが多いが、できない場合には換気の改善や防塵マスクを使用させる。急性期のものではステロイド剤が有効である。

[高橋昭三]

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世界大百科事典 第2版 「過敏性肺臓炎」の意味・わかりやすい解説

かびんせいはいぞうえん【過敏性肺臓炎 hypersensitivity pneumonitis】

真菌の胞子や細菌などを含む有機塵埃(じんあい)や,動物性異種タンパク質を反復して吸入した結果,それらが抗原となり,主として肺胞領域にアレルギー反応をおこす一群疾患総称。組織学的には瀰漫びまん)性肉芽腫性間質性肺炎の型をとる。外因性アレルギー性肺胞隔炎ともいう。労働環境,原因抗原の違いにより固有病名が命名されており,現在約20種を数える。その代表例である農夫肺(農夫症)は農業従事者にみられ,サイロの乾草に繁殖した好熱性放線菌類の胞子が原因である。

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世界大百科事典内の過敏性肺臓炎の言及

【加湿器肺】より

…真菌類によって汚染された空調施設や加湿器内の水が空気中にばらまかれ,それらを吸入することにより発症する過敏性肺臓炎。原因菌には,真菌のほかに細菌や原虫類も考えられている。…

【農夫肺】より

…農夫肺症ともいう。過敏性肺臓炎の一種で,カビの生えた枯草(牧草など)を取り扱う農夫にみられる病気。枯草に繁殖するカビはほとんどが好熱性放線菌であり,この胞子を吸入することによって起こる。…

※「過敏性肺臓炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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