日本大百科全書(ニッポニカ) 「膀胱異物」の意味・わかりやすい解説
膀胱異物
ぼうこういぶつ
膀胱内にある異物のことで、好奇心や自慰の目的で尿道内に挿入した小物体(ピン、紐(ひも)、ビニル管など)が膀胱内まで入ってしまった場合がもっとも多い。また、麻痺(まひ)のある患者が自分で導尿していて、カテーテル全体が誤って膀胱内にまで入り込んでしまう場合もある。このほか、腹腔(ふくくう)内または骨盤内手術の際に遺残したガーゼなどが膀胱壁を貫いて入り込んでいることもある。
患者はたいてい、とまどってしまい、すぐには泌尿器科医を訪れてこない。異物自体は物理的刺激により膀胱炎をおこすし、また、無菌ではないので細菌性の炎症もおこす。診断は患者の申告があれば容易であるが、骨盤内異物が迷入した場合などは患者自身が気づいていないので、頑固な膀胱炎が続くような場合には、膀胱部のX線撮影と膀胱鏡検査を行うべきである。尿素分解酵素をもった菌(プロテウス属など)の場合には、尿が強いアルカリ性となり、異物を核にして膀胱結石が速やかに形成される。
なお膀胱異物のほとんどは、異物鉗子(かんし)を装着した特殊な膀胱鏡で経尿道的に取り出すことができる。
[松下一男]