デジタル大辞泉
「膀胱炎」の意味・読み・例文・類語
ぼうこう‐えん〔バウクワウ‐〕【× 膀× 胱炎】
膀胱 の粘膜の炎症。主に細菌の感染によって起こり、女性に多い。尿が近くなり、排尿時に痛みがある。
出典 小学館 デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
ぼうこう‐えんバウクヮウ‥ 【膀胱炎】
〘 名詞 〙 膀胱におきた炎症。頻尿、尿混濁、排尿後の疼痛を主症状とする。膀胱カタル 。〔医語類聚(1872)〕
出典 精選版 日本国語大辞典 精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
膀胱炎
どんな病気でしょうか?
●おもな症状と経過
膀胱(ぼうこう )に細菌が感染することによっておこる病気です。排尿痛 、頻尿(ひんにょう)、尿の濁(にご)りが初期症状となります。排尿痛は排尿を終えたときにつーんとくる独特の痛みがあります。
放置すると排尿時だけでなく、ふだんも下腹部に痛みを感じるようになります。
尿に血が混じることもあり、排尿の終わりごろになって、とくに血尿の色が濃くなるのが特徴です。膀胱炎で熱がでることはありませんが、細菌が膀胱からさらに腎臓(じんぞう)にまで達すると、腎盂腎炎(じんうじんえん) をおこし、発熱や腰痛といった症状も現れます。
一般的に基礎疾患 のない単純性膀胱炎と、なんらかの基礎疾患があり、感染がおこりやすい状況でおこる複雑性膀胱炎に分けられます。
●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
原因となる細菌はほとんどがブドウ球菌 か大腸菌 です。この病気が成人の男性でみられることは非常にまれで、多くが女性の患者さんです。女性は男性に比べて尿道が短いため、細菌が侵入しやすくなっています。肛門(こうもん)やその周囲にすみ着いている菌が腟(ちつ)に移行して、さらに尿道、膀胱へと侵入し、そこで増殖するため炎症がおこります。長時間尿意をがまんしたり、疲労や月経で体の抵抗力が衰えたりしているときにかかりやすくなります。細菌によって膀胱の粘膜が傷つけられると血尿がでます。また、腎臓の病気や糖尿病 、免疫抑制状態にあって感染症をくり返しおこしている人などもかかりやすくなります。その場合、原因となる細菌は大腸菌やブドウ球菌に加えて、クレブシエラ菌、プロテウス菌 などが考えられます。
●病気の特徴
乳児では男の子が多く、2~3歳を過ぎると女の子に多く、とくに20~30歳代の女性に多くみられます。疲労、性交渉、妊娠、分娩(ぶんべん)、月経などが感染のきっかけになると考えられます。
よく行われている治療とケアをEBMでチェック
[治療とケア]水分を多くとる [評価]☆☆
[評価のポイント ] 水分を多めにとって尿量を多くし、侵入してくる、あるいは膀胱内にいる細菌を洗い流すことは病態生理学的には理にかなっており、専門家 の意見や経験から支持されています。
[治療とケア]抗菌薬を用いる [評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] 膀胱炎に対する抗菌薬の効果は、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。(1)
[治療とケア]冷えや過労を避ける [評価]☆☆
[評価のポイント] 専門家の意見や経験から支持されています。
[治療とケア]性交渉のあとに排尿する [評価]☆☆
[評価のポイント] 性的な活動期の女性に多い病気であり、性交渉後の排尿が予防につながるとの説が専門家の意見や経験から支持されています。
よく使われている薬をEBMでチェック
抗菌薬
[薬名]バクタ(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)(1) [評価]☆☆☆☆☆
[薬名]バクシダール(ノルフロキサシン )(1) [評価]☆☆☆☆☆
[薬名]タリビッド(オフロキサシン )(1) [評価]☆☆☆☆☆
[薬名]シプロキサン(塩酸シプロフロキサシン)(1) [評価]☆☆☆☆☆
[薬名]クラビット(レボフロキサシン水和物)(1) [評価]☆☆☆☆☆
[薬名]オゼックス/トスキサシン(トスフロキサシントシル酸塩水和物) [評価]☆☆
[薬名]ジスロマック(アジスロマイシン水和物) [評価]☆☆
[薬名]メイアクトMS(セフジトレンピボキシル) [評価]☆☆
[薬名]オーグメンチン(アモキシシリン水和物・クラブラン酸カリウム) [評価]☆☆
[評価のポイント] スルファメトキサゾール・トリメトプリム、ノルフロキサシン、オフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、レボフロキサシン水和物については非常に信頼性の高い臨床研究によって有効性が確認されています。ほかの薬についてもその作用から考えて同等の効果があると思われ、専門家の意見や経験から支持されています。
総合的に見て現在もっとも確かな治療法
基礎疾患の有無で異なる治療方針
同じ膀胱炎でも、もともと膀胱や尿管、腎臓に先天的あるいは後天的な異常(奇形、結石(けっせき)、閉塞(へいそく)など)があったり、膀胱カテーテルを装着していたり、糖尿病や免疫抑制状態などのため感染症をくり返していたりする人(複雑性膀胱炎)と、それらの要因(基礎疾患)がまったくない人(単純性膀胱炎)では、原因菌の種類が異なります。したがって、治療の基本的な方針もまったく異なってきます。
基礎疾患がなければスルファメトキサゾール・トリメトプリム、ニューキノロン系の抗菌薬を
基礎疾患のない人では、ほとんどが大腸菌かブドウ球菌を原因とする膀胱炎であり、バクタ(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)、バクシダール(ノルフロキサシン)、タリビッド(オフロキサシン)、シプロキサン(塩酸シプロフロキサシン)などニューキノロン系の抗菌薬のうち、どれかを最低3日間、経口で服用します。
基礎疾患があれば多くの細菌に有効な抗菌薬を
基礎疾患のある人では、大腸菌、ブドウ球菌に加えて、クレブシエラ菌、プロテウス菌、セレチア菌、緑膿(りょくのう)菌、腸球菌など、さまざまな原因菌を考えなくてはなりません。したがって、尿培養で原因菌が明確になるまでは、多くの種類の菌に有効な抗菌薬を用いる必要があります。単純性膀胱炎よりも長期の治療(5~10日)が必要となります。
予防的な抗菌薬の服用も
性的に活動的な女性で、頻繁(ひんぱん)に膀胱炎をくり返すときには、予防的な抗菌薬の内服が効果的なこともあります。(1)Gupta K, Hooton TM, et al. International clinical practice guidelines for the treatment of acute uncomplicated cystitis and pyelonephritis in women: A 2010 update by the Infectious Diseases Society of America and the European Society for Microbiology and infectious Diseases. Clin Infect Dis. 2011; 52: 103-120.
出典 法研「EBM 正しい治療がわかる本」 EBM 正しい治療がわかる本について 情報
膀胱炎 (ぼうこうえん) cystitis
目次 急性膀胱炎 acute cystitis 慢性膀胱炎 chronic cystitis 放射線性膀胱炎 radiation cystitis 尿路感染症 の一つで,膀胱の炎症をいう。細菌やウイルスの感染によって起こるが,放射線やアレルギーなどによることもある。その経過によって急性膀胱炎と慢性膀胱炎に大別され,これとは別に放射線療法によって起こる放射線性膀胱炎がある。
急性膀胱炎acute cystitis 20~30歳代の女性に多い。原因となる細菌はほとんどが大腸菌で,外陰部から尿道を逆行して膀胱に侵入すると考えられている。女性は男性にくらべて尿道が短く,解剖学的にこのような逆行性の細菌感染を起こしやすい。排尿をがまんしすぎたり,下痢や便秘,性交など局所の充血が誘因となることが多い。頻尿 ,排尿時の疼痛,尿の混濁を膀胱炎の三大症状と呼び,本症の診断にも重要である。このほかに下腹部痛,血尿などを伴うことがあるが,発熱はないのが普通である。発熱がある場合は,他の病気,たとえば腎盂腎炎 (じんうじんえん)などの合併が考えられる。診断には膀胱鏡検査や尿の顕微鏡検査あるいは培養検査が行われる。治療は抗生物質の投与によって数日で治癒するのが普通であるが,再発をくり返したり,症状がなかなか改善しない場合は,単純な急性膀胱炎ではなく,慢性膀胱炎や尿路結核 (腎結核 )の疑いが強くなる。急性膀胱炎で血尿がとくに強い場合を急性出血性膀胱炎 と呼ぶことがある。本症では膀胱粘膜からの高度の出血がみられる以外は,急性膀胱炎と同様な症状を示す。原因は細菌感染以外にアレルギーやウイルスあるいはシクロホスホアミドなどの薬物が関与しているとされている。この型の膀胱炎は20~30歳代の女性以外に小児にも多くみられる。
慢性膀胱炎chronic cystitis 神経因性膀胱機能障害 ,前立腺肥大症 ,前立腺癌 のように尿の流れを妨げる疾患や,膀胱結石 ,膀胱腫瘍 ,前立腺炎,尿道炎などの膀胱炎を慢性化させる基礎疾患が存在することが多い。本症の好発年齢はこのような病気が多くみられる高齢者で,原因となる菌は大腸菌,変形菌,緑膿菌などグラム陰性杆菌が多い。症状は,急性膀胱炎と同様に頻尿,排尿痛,尿混濁を三大症状とするが,一般に急性にくらべて軽く,排尿時の不快感,下腹部や会陰部の不快感,排尿終了後にも尿が残る感じ(残尿感 )などを訴えることが多い。また症状のないこともあるが,尿の検査で細菌と膿球(白血球)を認める。診断には膀胱鏡検査などで慢性化の原因となる基礎疾患の発見に努めなければならない。治療は,基礎疾患に対する適切な治療,たとえば膀胱結石に対しては結石の除去,前立腺肥大症に対しては前立腺摘出手術などを第一とし,次いで抗生物質の投与を行う。いたずらに抗生物質を長期に投与しても,原因が除去されないかぎり膀胱炎の根治は困難で,再発をくり返すからである。
放射線性膀胱炎radiation cystitis 子宮癌や直腸癌などの骨盤内悪性腫瘍に対し放射線療法を行ったため起こる膀胱炎を放射線性膀胱炎と呼んで区別する。本症の原因は膀胱の放射線障害で,放射線照射後数週間の早期に発症するものは急性膀胱炎の症状を示すが,照射後数ヵ月から数年を経て発症するものは血尿を主要症状とし,慢性症状となる。 執筆者:上野 精
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」 改訂新版 世界大百科事典について 情報
膀胱炎 ぼうこうえん Cystitis (感染症)
主に大腸からの細菌が膀胱内に侵入し、増殖して炎症を起こす細菌感染症 です。
急性膀胱炎 は、10代後半から20~30代の女性に多く発症します。女性は外尿道口が腟の付近に開口して汚染されやすいうえに、尿道が男性と比較して短いため細菌が膀胱内に侵入しやすく、全体として女性の頻度が高くなります。
一方、慢性膀胱炎 は、あまり自覚症状が強くなく、膀胱機能が低下している場合や前立腺肥大症 などの病気が原因で発症することがあります。ここでは、急性膀胱炎について解説します。
急性膀胱炎は、排尿痛、頻尿 ( ひんにょう ) 、尿混濁などの特徴的な症状が現れます。下腹部の不快感も伴います。これらの症状は急激に現れます。前項で述べた急性腎盂腎炎 とは異なり、発熱はありません。
急性腎盂腎炎 と同様に尿検査で診断します。前述の症状に加えて、尿中に一定数以上の白血球と細菌を認めれば膀胱炎と診断されます。尿の細菌培養検査も同時に行います。培養検査で細菌が検出されない場合は、薬剤性膀胱炎や間質性 ( かんしつせい ) 膀胱炎などの特殊な膀胱炎を疑います。
ほとんどの膀胱炎は細菌感染症なので、抗菌薬を使用します。経口抗菌薬を3日間ほど内服します。内服を開始して1日程度で、症状は劇的に改善します。
頻尿や排尿痛のために排尿することを嫌がり、水分をあまり摂取しない患者さんがいますが、膀胱内の細菌を洗い流すために尿量を増やす必要があるので、水分を十分に摂取することが大切です。
急性膀胱炎 の治療薬は、一般の市販薬 として薬局でも購入できますが、最近、抗菌薬が効きにくい耐性菌 ( たいせいきん ) が増加しています。また、尿路に膀胱炎以外の病気が潜んでいることもあるため、なるべく病院を受診することをすすめます。
再発予防には、水分補給 と排尿を我慢しないことが有効とされています。繰り返し再発する場合は、泌尿器科専門医の診断が必要です。
公文 裕巳
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」 六訂版 家庭医学大全科について 情報
ぼうこうえん【膀胱炎】
《どんな病気か?》
〈細菌の侵入ではげしい痛みや血尿を引き起こす〉
膀胱炎(ぼうこうえん) では、排尿時に痛みを感じたり、残尿感(ざんにょうかん) があったり、また頻繁に尿意を催したり(頻尿(ひんにょう) )というのがおもな症状です。痛みはとくに排尿の最後に感じることが多く、それも刺すようなはげしい痛みで、ひどい場合は気を失ってしまうほどです。ほかに、尿がにごる、血尿(けつにょう) がでるなどの症状もあります。
膀胱炎の多くは急性がほとんどで、大腸菌(だいちょうきん) やブドウ球菌などの細菌が尿道から侵入し、膀胱まで達して粘膜(ねんまく) に炎症を起こさせてしまうのが原因です。
健康なら多少の細菌が侵入しても、細菌に対する抵抗力や、排尿時の自浄作用 によって、炎症を起こすにはいたりませんが、排尿をがまんしたり、疲労や睡眠不足、冷えや便秘、性交などが誘因となると、膀胱炎を引き起こしてしまいます。
膀胱炎が女性に多くみられるのは、尿道口周辺の外陰部に分泌物(ぶんぴつぶつ) が多く、細菌が繁殖しやすい状態にあるうえ、尿道が短く、尿道括約筋(にょうどうかつやくきん) の働きも弱いので、細菌が膀胱まで容易に達してしまうからです。
外陰部を清潔にして、体、とくに下腹部をあたためるなど、誘因となるような条件を排除して予防しましょう。
《関連する食品》
〈ダイズ、アズキ、レンコンに利尿・消炎効果が〉
○栄養成分としての働きから
大量の排尿が効果のある膀胱炎は、利尿効果のある食べもので排尿回数をふやすことがいちばんです。
利尿作用をうながすには、サポニン やルチン、タンニン などの成分が有効です。
サポニンはアズキの皮に多く含まれ、利尿効果をうながすと同時に炎症も鎮めてくれます。
ルチンを含む食品としてはそばがあります。そば湯も飲むようにすると、より効果的です。
タンニンを含む食品にレンコン があげられますが、レンコンは止血作用 や消炎作用にすぐれています。
痛みがひどいときや血尿があるときに、レンコンのしぼり汁を飲むと効果があります。
ポリフェノール の多いクランベリーなどもおすすめです。
○漢方的な働きから
漢方でも、アズキがゆを、解毒・利尿効果を目的として食べます。ただし、赤アズキは利尿作用の妙薬ですが、最初に煮(に) だした汁に利尿作用があり、その部分を捨ててつくったあんには、利尿作用はありません。
また、ダイズにも尿がでやすくなる作用があるので、豆乳やとうふなどのダイズ製品も効果的です。
尿量をふやし、利尿をうながす食品として、成分の90%が水分であるトウガンやスイカなどを摂取することでも効果が期待できます。
〈アズキは皮ごと摂取し、モチ米とは組み合わせない〉
○注意すべきこと
おはぎやお汁粉など、アズキとモチ米はセットになりがちです。ところが、モチ米には排尿をさまたげる作用があるため、逆効果。いくらアズキが入っているとはいえ、おこわやおはぎなどは食べないように注意しましょう。
ぼうこうえん【膀胱炎】
《どんな病気か?》
膀胱炎(ぼうこうえん) は膀胱の粘膜(ねんまく) に炎症が起こる病気で、多くは細菌感染が原因になります。
女性に多い病気ですが、乳児期にも比較的多くみられます。
症状が軽い場合は、水分を大量にとって、尿量をふやせば自然に治ります。
ぜんそく治療薬などの抗アレルギー薬を服用していると、膀胱炎のような症状や尿の異常が現れることがありますが、薬の服用を中止すると症状も消失します。
《関連する食品》
〈IPAが炎症を抑え、ビタミンAで粘膜強化〉
○栄養成分としての働きから
膀胱炎に効果があるのはIPA、ビタミンA、C、Eなどです。
まずIPAは、膀胱の粘膜の炎症を抑えるのに有効で、マグロやブリなどに多く含まれています。
ビタミンAは、粘膜を丈夫にして細菌の侵入を防ぐ働きがあります。ビタミンAにはレバーなどに含まれているレチノールと、ニンジン、カボチャなどに含まれている植物性のカロテンとがあり、カロテンは免疫細胞を活性化する働きが認められています。油といっしょにとると吸収率が上がるので、野菜炒(いた) めなどにしてとると効果的です。
ビタミンCは、白血球の働きを強化して免疫力を高めます。また、ビタミンEにも免疫反応を高める働きがあります。
○漢方的な働きから
漢方的には赤アズキがよく用いられます。利尿作用が強く、残尿感をすっきりさせます。
出典 小学館 食の医学館について 情報
膀胱炎 ぼうこうえん cystitis
膀胱の炎症で、尿路疾患のうちで頻度がもっとも高い。原因によって細菌性と非細菌性に大別され、細菌性膀胱炎はさらに結核菌などによる特異性膀胱炎と、大腸菌などによる非特異性膀胱炎に分けられる。しかし、通常、単に膀胱炎といえば非特異性細菌性膀胱炎をさしており、その経過によって急性膀胱炎と慢性膀胱炎に分けられる。
急性膀胱炎の原因菌はおもに大腸菌とブドウ球菌であり、尿道より上行して膀胱に達する場合が多い。20~30歳代のとくに女性に多く、排尿をがまんしたり、冷えや性交などが誘因となる場合が多い。症状としては排尿痛、頻尿、残尿感などが多く、また排尿の最後に少量の出血を認めることもある。尿検査では膿(のう)尿と細菌尿を認める。水分を多めに摂取し、排尿をがまんせず、保温に気をつけ、またアルコールや刺激物を避けるように心がける。化学療法を行えば短期間に快復するが、ときに再発することがある。
慢性膀胱炎は、慢性化の要因として尿の流れを悪くするような基礎疾患を合併していることが多い。したがって、前立腺(ぜんりつせん)肥大症や膀胱腫瘍(しゅよう)のおきやすい比較的高齢者に多くみられ、また若干男性に多い。症状は急性膀胱炎と同様であるが、はっきりした症状を呈さない場合も多く、また基礎疾患自体の症状のみを呈するものも多い。治療としては、化学療法と同時に基礎疾患の治療が重要で、基礎疾患を除去しない限り感染を根絶することは一般に困難である。
なお、非細菌性膀胱炎としては、子宮や直腸に対する放射線治療の際にみられる放射線性膀胱炎、膀胱内の異物や結石などの機械的刺激による膀胱炎、ある種の薬剤の尿中代謝産物の化学的刺激による膀胱炎などがある。また、幼小児に比較的多いアレルギー性膀胱炎、特殊なものとしては中年女性にみられる間質性膀胱炎などもある。
[河田幸道]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) 日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
膀胱炎(尿路感染症)
(2)膀胱炎(cystitis)
概念・病態
膀胱炎は,急性単純性と複雑性に分類される.多くは細菌性の炎症であるが結核,ウイルス,放射線,薬剤も原因となる.急性単純性は性的活動期の若年女性や閉経後の萎縮性膣炎を有する高齢女性に多く,性行為との関連による発症もある.寒冷,疲労などストレスも誘因となる.起因菌は大腸菌が多く70~95%を占める.前立腺肥大症や神経因性膀胱などの下部尿路疾患がある高齢者や糖尿病などの基礎疾患がある複雑性膀胱炎では緑膿菌や腸球菌などの分離頻度が高くなってくる.
診断
頻尿,排尿時痛,尿混濁が3大主徴である.通常発熱は伴わない.排尿終末時に排尿時痛が強いことが特徴である.尿は肉眼的に混濁があり,ときに肉眼的血尿も認める.尿沈査では膿尿,細菌尿を認める.膿尿は白血球5個/HPF以上,細菌尿は細菌104 CFU/mL以上と定義される.中間尿にて尿細菌培養を行い起因菌の同定を行い,薬剤に対する感受性試験を行う.
治療
急性期には保温,安静,水分摂取を基本とする.急性膀胱炎はニューキノロン系抗菌薬を3日間かセフェム系抗菌薬7日間の投与が推奨されている.[久末伸一・堀江重郎]
出典 内科学 第10版 内科学 第10版について 情報
ぼうこうえん【膀胱炎 Cystitis】
◎とくに女性に多い病気
膀胱の粘膜(ねんまく)に炎症がおこるもので、多くは細菌の感染が原因です。
原因となる病気がとりたててない場合を単純性膀胱炎(たんじゅんせいぼうこうえん)といい、急性膀胱炎として発症しますが、治りやすいものです。
尿路になんらかの原因となる病気がある場合は複雑性膀胱炎(ふくざつせいぼうこうえん)といい、治りにくく、慢性膀胱炎になりやすいものです。
急性膀胱炎は、とくに女性に多い病気で、幼児期にも比較的多いのですが、性活動のさかんな時期と閉経期(へいけいき)に発症のピークがあります。
慢性膀胱炎は、さまざまな尿路の病気にともなうもので、高齢者に多く、また、尿の通過障害をおこしやすい男性に多くみられます。
出典 小学館 家庭医学館について 情報
膀胱炎【ぼうこうえん】
膀胱の急性または慢性の炎症。多くは細菌感染。腎盂(じんう)炎 や他の尿路系の炎症に続発することが多い。悪寒(おかん),発熱,頻尿(ひんにょう),排尿時灼熱(しゃくねつ)感,血尿などがあり,検尿で膿尿がみられる。原因菌に対して有効な抗生物質を投与し,安静にして下腹部を暖める。同時に合併症なども治療する。なおりにくい慢性膀胱炎には結核性のものや真菌性のものがよくある。 →関連項目腎結核
出典 株式会社平凡社 百科事典マイペディアについて 情報
膀胱炎 ぼうこうえん cystitis
頻尿,排尿痛,尿混濁を主症状とする膀胱の炎症。原因も病変も多岐にわたるが,大部分は細菌感染に起因するもので,大腸菌などが尿道に入り,膀胱に逆行して炎症を起す (→細菌尿 ) 。この細菌性膀胱炎は,かかりやすいがなおりやすいので,単純性膀胱炎ともいう。ほとんどが女性に起る。ほかにアレルギー性,薬物性,出血性,放射線性,間質性などがあるが,まれである。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の 膀胱炎の言及
【膀胱】より
…[尿]【藤田 尚男】 膀胱の病気には奇形,炎症,腫瘍,神経因性膀胱,膀胱尿管逆流,外傷,結石,異物などがある。最もよくみられるのは膀胱炎である。急性膀胱炎は細菌などの感染により起こり,抗生物質によって治るが,慢性膀胱炎は治りにくい。…
※「膀胱炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」