化学辞典 第2版 「臨界せん断応力」の解説
臨界せん断応力
リンカイセンダンオウリョク
critical shear stress
材料にせん断応力を加えていくと弾性的なせん断ひずみが増加していくが,ある値を超すとすべりが開始し,力を除いてももとの形に回復しなくなる.このときのせん断応力を臨界せん断応力という.また,すべった面のすべり方向にはたらくせん断応力を臨界分解せん断応力(critical resolved shear stress,CRSS)という.結晶の臨界せん断応力は原子位置によるポテンシャルの形を仮定することにより容易に求められる.正弦近似によればその値は剛性率の約1/6で,さらに厳密にポテンシャルの形を検討すると約1/30である.この値は実際に測定される値よりも 103 倍大きい.この差は転位の運動を考えることにより理解できる.可動な転位のないひげ結晶では理論値に近い測定値が得られている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報