ひげ結晶(読み)ひげけっしょう(英語表記)whisker crystal

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ひげ結晶
ひげけっしょう
whisker crystal

ウィスカー。金属表面を適当な温度と雰囲気に保つと非常に強く硬い細い結晶が伸び出すことがあり,これをひげ結晶という。転位を含まない完全に近い結晶構造をもつと考えられており,成因は諸説があって確定しないが,雰囲気原子が地の金属のらせん転位部に吸着したときの相互作用によるとする説が有力である。初めアメリカで被覆銅線にこれが生え,被覆を破ってショートの原因になるので防除法が研究されたが,その後これが異常な硬さと強さをもつことがわかり,以後利用面で見直されるようになった。実際の製法は通常金属ハロゲン化物の還元によっており,大きさは径 0.01~10 μm 程度,長さは 1cm以上のものも得られるが,あまり長くなると格子欠陥が入って特徴を失う。普通につくられる金属ひげ結晶の引張り強さは鉄 1300,クロム 900,ニッケル 390 (単位は kg/mm2 ) と普通金属材料の数十倍以上もあるので,多量生産して複合金属材料の強化繊維材として使われている。ひげ結晶は金属だけでなく Al2O3 ,B4C ,SiC ,黒鉛などの非金属材料にもでき,その強さは 1500~2100 kg/mm2 と,信じられないほどの値を示す。これも複合材料の強化繊維材になる。

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化学辞典 第2版の解説

ひげ結晶
ヒゲケッショウ
whisker crystal

ホイスカーともいう.直径0.1~50 μm 程度,長さ数 mm 以上の金属あるいは非金属の繊維状の単結晶.断面は,結晶構造,成長方位により四角,六角,その他の形状をもつ.天然では,銅あるいは銀などの硫化鉱に見られるが,人工的には,低融点物質について蒸発・凝縮法,金属についてはハロゲン化物の水素還元(化学還元法),酸化物などについてはハロゲン化物の気相酸化により育成できる.よいひげ結晶は転位などの欠陥を含まない完全結晶で,理論値に近いきわめて大きい引張強さをもち,また化学的にも比較的不活性である.とくに,B,B4C,C,Al2O3,SiC,およびSi3N4などの密度が小さく高融点のひげ結晶は,金属,合成樹脂を基体とした複合材料の強化物質として注目されている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典内のひげ結晶の言及

【転位】より

… 転位のもつその他の重要な性質として,転位が点欠陥の生成消滅を起こす場所となること,また,結晶成長をつかさどることなどがあげられる。逆に,結晶中に転位が存在しないとき,われわれが日常経験するのと非常に異なる性質を示すことは,ホイスカー(ひげ結晶)と呼ばれる細い物質について見ることができる。これは,猫のひげのように繊維状にぴんとまっすぐに伸びた,直径が2~3μm程度の単結晶である。…

【ホイスカー】より

…ウィスカー,ねこのひげ,ひげ結晶などとも呼ばれる針状または繊維状の結晶体。1948年,アメリカのベル電話研究所で電話回路用コンデンサーの故障を調査中,めっきされたスズおよびカドミウム層から成長した針状の結晶が原因であることをつきとめた。…

※「ひげ結晶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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