日本大百科全書(ニッポニカ) 「自由式農業」の意味・わかりやすい解説
自由式農業
じゆうしきのうぎょう
freie Wirtschaft ドイツ語
農業における土地利用方式の一種。最初ドイツのチューネンが農業立地論の立場から、作付け順序に拘束されることなく、市況に応じて価格的にもっとも有利な作物を選択する方式を自由式農業と名づけ、市場にもっとも近接して位置する経営方式で、いわゆるチューネンの第一農業圏に成立するものとした。また、同じくドイツのゼッテガストは、チューネンの自由式農業圏を蒸気犂(り)を導入する工業的農業圏とし、それとは別に、自由式農業を、作付け順序の決定が市況に応じて自由に決定できる投機的農業と規定した。しかし、自由式農業をこのように理解すると、本来、経営方式はある作付け順序型式内で作物交替を自由にしうるものであり、自由式農業の規定はあいまいになる。そこで、ブリンクマン‐アンドレーの農業経営方式の新区分では、自由式農業を高度に発展した輪栽式農業ととらえ、超輪栽式農業と規定する。超輪栽式農業は、禾穀(かこく)作物と禾穀作物以外の簇葉(そうよう)作物との作物交替において、簇葉作物の作付け割合が禾穀作物の作付け割合よりも多くなる経営方式であり、簇葉作物―簇葉作物―禾穀作物の作付け順序項がその作付け順序型式のなかに入ってくる。日本では、都市近郊の蔬菜(そさい)、花卉(かき)などの商品的生産を行っている農業地域に自由式農業が成立する。
[四方康行]