生産(読み)セイサン(英語表記)production

翻訳|production

デジタル大辞泉 「生産」の意味・読み・例文・類語

せい‐さん【生産】

[名](スル)
生活に必要な物資などをつくりだすこと。「米を生産する」「大量生産
人間が自然に働きかけ、財・サービスをつくりだし、または採取・育成する活動。
出産。しょうさん。
[類語]産出原産産する量産多産増産減産再生産

しょう‐さん〔シヤウ‐〕【生産】

《「しょうざん」とも》
子を生むこと。また、子が生まれること。出産。
「―より成人に至るまで終に物言ふ事なし」〈盛衰記・二四〉
暮らしのために働くこと。
「明くれば公事にせめられ暮るれば―に哀しむ」〈地蔵菩薩霊験記・一〇〉

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精選版 日本国語大辞典 「生産」の意味・読み・例文・類語

せい‐さん【生産】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 生活のもとでとなる仕事をすること。商売。家業。しょうさん。
    1. [初出の実例]「Seisan セイサン 生産〈訳〉生計、職業」(出典:和英語林集成(初版)(1867))
    2. 「又生計営み易きを以て、〈略〉此地にて生産する者も夥しく」(出典:万国新話(1868)〈柳河春三編〉一)
    3. [その他の文献]〔史記‐陳丞相世家〕
  3. ( ━する ) 消費のための欲望を満足させ、生活に直接、間接に必要な物資や用役を作り出すこと。また、その活動。農業、鉱業、工業などの物的生産と運輸業倉庫業などの用役生産とに大別される。
    1. [初出の実例]「是即ち生産進歩のために最も願ふ可き有様なりとて」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉一)
    2. 「国の貧富は物貨生産の力の大小如何に在り」(出典:一年有半(1901)〈中江兆民〉二)
  4. ( ━する ) 出産すること。しょうさん。
    1. [初出の実例]「都俗の諺に曰、『三女を生産すれば、一生安活す』と」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)三)
  5. 生まれること。また、生まれ。
    1. [初出の実例]「其始外国より渡来し生産(セイサン)(つまびらかならざる)により賤しめ候由」(出典:新聞雑誌‐七号・明治四年(1871)七月)

しょう‐さんシャウ‥【生産】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「しょう」は「生」の呉音。「しょうざん」とも )
  2. 子どもを産むこと。また、生まれること。出産。せいさん。
    1. [初出の実例]「従者之中一人妊者ありて、於旅行之共生産」(出典:江談抄(1111頃)六)
    2. 「王城に童子あり、生産(シャウサン)より成人に至るまで、終に物云事なし」(出典:源平盛衰記(14C前)二四)
  3. 生計のために働くこと。なりわい。せいさん。
    1. [初出の実例]「明れば公事に逼られ暮れば生産(シャウサン)に哀(かなし)む」(出典:地蔵菩薩霊験記(16C後)一〇)

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改訂新版 世界大百科事典 「生産」の意味・わかりやすい解説

生産 (せいさん)
production

一般に,物的・人的環境に働きかけて生活の資料を生み出す活動をいう。そのさい,生活の資料とはたんに有形の物財だけでなく,無形のサービス(用役),たとえば交通,医療,娯楽などのサービスをも含むと解すべきである。広義には孤立して行う自給自足的な生産活動,あるいは家庭の主婦の家事労働や芸術家の創作活動も生産と呼べるが,狭義には交換や取引の対象となるサービスを生み出す活動を生産といい,経済学がふつう問題にするのはこの意味での生産である。

生命を維持し再生産していくために,また社会生活を営んでいくために人間は生産活動を行わなければならないが,当然のこととしてこの生産は自然に働きかけて資源を採取しそれを変形する技術過程としての側面をもっている。生産力の発展は技術過程の改良に負うところが大きく,なかでも科学・技術の生産への応用といわゆる迂回生産の進展は物的生産力を飛躍的に高めた。科学・技術の発展が生産力の向上に寄与することは自明であるが,歴史上とりわけ重要なのは18世紀の蒸気機関の発明とそれに続く一連の動力革命である。これらによって生産工程を大規模に機械化することが初めて可能になったのである。生産工程の機械化は物的生産能力を飛躍的に増大させたにとどまらない。それは生産に付随する偶然性や不確実性を著しく減少させて,生産を人為的なコントロールのもとにおくことを可能にもしたのである。生産が日々の規則的な営みとなるに至ったのは工程の機械化によるところが大きい。生産能力の向上に寄与したいま一つの技術的要因は迂回生産である。同じ魚を捕らえるにしても直接に手でつかまえるよりはまず網を製作し,それを用いて捕らえたほうが獲物も多い。一般に迂回路が長ければ長いほど生産能力も高まる。迂回生産は技術過程の分化を意味しており,この点で次に述べる分業とはいちおう区別される。

生産は物質を道具や機械を用いて変形する技術過程であるとともに,それはまた人間どうしの一定の関係の中で営まれる社会過程でもある。絶海の孤島で自家用の財をまったくの独力で生産するロビンソン・クルーソーの物語は多分に空想の所産であって,現実の生産は協業や分業という形をとった直接・間接の協働の過程である。工場や企業といった個別生産単位の内部では活動がさまざまな職種によって分割され,それらは全体の目標にてらして有機的に統合されている。一方,生産単位と生産単位の間にも社会的分業による相互補完的な関係がみられ,このような関係は網の目のように社会の隅々にまで広がっている。生産は工場,企業,社会のどのレベルにおいてもなんらかの形で組織化されており,このことによってそれは社会的性格を帯びてくるのである。

 組織的活動としての生産には二つの側面がある。すなわち,それは人々が協力して生産にあたる協働の過程であり,同時に持続して営まれる制度化された過程である。前者についていえば,その生産性に及ぼす効果が重要である。たとえば協業や分業が生産性を高めることはほとんど自明だといってもいい。重い物を1人で持ち上げるよりは何人かの人々が協力して持ち上げたほうがはるかに能率的であるように,同一の仕事を単独で行うよりは大勢の人が協力して行ったほうが仕事がはかどる(協業の利益)。またアダムスミスの有名なピン工場の例が示しているように,1人の労働者がすべての工程をこなすよりは労働者を特定の工程に専門化させたほうがはるかに生産能率は高い(分業の利益)。工場や企業における協業・分業は工程の機械化と相まって大規模生産を可能にし,大規模生産のもたらす利益は組織規模拡大の大きな誘因となる。協業や分業などによる協働の利益は個々の生産組織の内部においてだけでなく,社会全般においてもみることができる。いわゆる社会的分業は目的意識的に形成された工場内分業とちがって,生産性を高めるために意図的に組織化されたわけではないが,それでも職業が多岐に分化し個々の生産組織が特定の財の生産に特化する結果,工場内分業と同様の利益が社会にもたらされるのである。生産の協働による組織化はこのように生産性を高めるが,一方この組織は必ずなんらかの様式に制度化されている。いきあたりばったりに行われる生産とは異なって,組織化された生産は制度化された持続的活動として行われるのである。個別生産組織は成文化された規則や慣習や伝統にもとづく暗黙の取決めによって組織化され,これらにもとづいて日々の生産活動が行われる。一方,個別生産組織から目を社会に転じると,そこでもまた公式・非公式の規則が生産の組織化原理となっている。近代以前の社会においては生産は共同体の慣習や伝統によって組織化され,生産物の分配や交換にさいして公正や正義の観念が重要な役割をはたした。時代が進むにつれて生産は共同体の靱帯(じんたい)を解き放たれ,私的所有権を基礎にした対市場的な活動として行われるようになるが,その場合でも生産が〈自由放任〉に全面的にゆだねられたというわけではなく,生産は法や慣習を含む市場のルールの規制下におかれたのである。

現代の生産の特徴は,それが事業businessとして営まれていることである。すなわち,生産や投資は利潤を得ることを目的として行われており,生産組織=企業は利潤獲得を第一の目標とした組織である。この意味で事業の体制は価格体制あるいは企業体制と呼ばれることもある。18世紀以降,生産の事業化が徐々に進展していったが,当初は企業家が企業の所有者でもあるのが一般的で企業規模は概して小さかった。19世紀の後半にはいると株式会社制度が普及しいわゆる所有と経営の分離という現象が起こるにつれて大企業が出現し,やがて生産の大企業による寡占化・独占化が進んでいった。このような生産の事業化は物的な富を増すという生産本来の目的とは必ずしも両立しない。たとえば寡占独占の状態では生産を制限することが企業の利益にかなうのが通例である。現代産業社会の批判者であるT.B.ベブレンは,制度化された物質過程としての生産,すなわち産業industryを事業と対比させ,産業はしだいに事業にとって従属的な位置しかもたなくなってきたこと,そして生産技術の革新創意工夫をこらしたかつての大企業家=産業の総帥はやがて企業の金融的方面で能力を発揮する金融の総帥に席を譲るに至ったことを指摘した。事業と産業とが乖離(かいり)し,後者が前者に左右されているという認識は資本主義文明の批判者たちに多かれ少なかれ見受けられ,このような認識のうえに立って,たとえばマルクスは資本主義の廃棄を唱え,ベブレンは技術者によるソビエトを構想し,またケインズは経済への積極的な国家介入を主張した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「生産」の意味・わかりやすい解説

生産
せいさん
production

人間生活に必要な物資・用役をつくりだす経済的行為のこと。用役(サービス)の提供をも生産とみるかどうかで、経済学の見方は二つに分かれる。

[一杉哲也]

物的生産・用役生産

主として投下労働価値説にたつ人々は、物的生産のみを生産とみるので、農林水産業・鉱業・工業・建設業などの物的生産部門と、それに直結する運輸業・倉庫業・通信業などの物的流通部門が生産部門であるとしている。これらの生産物を生み出す労働が生産的労働であり、これ以外の主として人が人にサービスを提供する労働は不生産的労働とよばれる。

 この見方は、経済とは人間が労働力を発揮して、機械・道具などの生産手段を用いて自然に働きかけ、人間生活に必要な物資を獲得する行動であるとする経済観に基づいている。ついで経済を生産→分配→消費・蓄積→生産という、無限に繰り返される循環過程としてみるとき、生産に人々がどう関係しているかによって分配のルールが決まるし、分配分を得て初めて人々は消費・蓄積できるのだから、生産は経済の本源的・基礎的行為であることになる。

 これに対して、主として主観価値説にたつ人々は、用役(サービス)の提供も生産とみる。これは、生産が人間の欲求充足のために行われるのであり、経済循環を消費・蓄積→生産→分配→消費・蓄積の繰り返しとみて、人間が直接・間接に欲求する物資・用役だけが生産されるとみているのである。

 この場合、直接、欲求充足に用いられない生産手段そのものの生産、すなわち蓄積がなぜ行われるかが問題となろう。これに対する答えが迂回(うかい)生産である。ある期間において生産可能な生産物すべてを消費してしまわないで、その一部を間接的な生産手段として蓄積すれば、次の生産段階でそれを利用することによって、直接的な消費物資がより能率的に生産できる。こうした回り道的な生産の有利さが「迂回生産の利益」である。

[一杉哲也]

生産要素

生産に本源的に必要とされる財あるいは用役は生産要素とよばれ、伝統的な古典派経済学の区分に従えば労働・土地・資本の三つに分類される。この分け方は、生産要素が生産過程で協働する点ではなく、むしろ労働に賃金、土地に地代、資本に利子および利潤というように、当時のイギリスの三大階級に階級所得が分配される点にその視点を置いていた。しかし現在では生産に視点を置いて、労働力・土地・資本財を生産の三要素とする考え方がとられるようになった。労働力は労働が提供する用役であり、土地は大地の広がりとしての土地だけでなく、生産に必要なすべての自然資源・気候・風土などを含み、資本財は道具・機械・設備・原材料・燃料・動力などをさしている。また、労働と土地はその性格上、本源的生産要素とよばれ、資本財は生産された生産手段とよばれる。

 一方、このような区分に対して、企業者能力を生産要素の一つに数える考え方がある。そこでは企業者能力に対する報酬は企業利潤とされる。しかし、もし企業者能力をもつ企業者に希少性があるならば、革新と競争が行き着いた静態的・単純再生産的状態でも企業利潤は消滅しないが、そのとき企業利潤は企業者賃金ともよばれるべきものとなる。また私有財産制を否定する社会主義社会においては、企業利潤は存在しても、それは企業者には帰属しないから、企業者能力を生産要素の一つとすることはできないとされている。

[一杉哲也]

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普及版 字通 「生産」の読み・字形・画数・意味

【生産】せいさん

生業。

字通「生」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内の生産の言及

【資本】より

…この概念は資本主義経済あるいはその萌芽である経済組織を分析するための概念として発生したものであり,その意味は根本において二つに限定される。資本は第1に,個人にとって所得を得るための手段である資産の蓄積を意味し,第2に,社会にとって生産を行うための要件である実物の蓄積を意味する。日常の用法では,〈資本〉の語は元手,つまり貸付けを通じて利子を獲得するための元金,あるいは営業の成立に必要な資金を指すのが普通である。…

※「生産」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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