さい(読み)サイ

デジタル大辞泉 「さい」の意味・読み・例文・類語

さい

[形動]《「さよう」の音変化》「さよう」のいく分ぞんざいな言い方。「さいざんす」「さいです」
[類語]さようそんなそのようなそうしたそういうそのようにそうそれほどしか

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精選版 日本国語大辞典 「さい」の意味・読み・例文・類語

さい

  1. ( 助動詞「さる」の命令形。四段・ナ変以外の動詞の連用形に付いて ) 軽い尊敬または親愛の意を持った命令を表わす。なさい。中世から近世にかけて用いられた。
    1. [初出の実例]「あまり言葉のかけたさに、あれ見さひなう、空行く雲の速さよ」(出典:歌謡・閑吟集(1518))
    2. 「あの山見さい、此の山見さい。いただきやつれた小原木」(出典:虎寛本狂言・素襖落(室町末‐近世初))

さいの語誌

( 1 )「ロドリゲス日本大文典」では、四段活用系の動詞に続く「い」と、一・二段活用系の動詞に続く「さい」とを組み合わせた形でとらえ、ともに低い敬意を示す命令のことばとして挙げている。
( 2 )室町時代後期の口語資料に同程度の敬意を示す命令表現として「い」とともに見られるが、中央語における衰退は早く、江戸時代初期には古い感じを伴い、老人言葉などとして現われ、その後も歌謡など、特殊な慣用的表現に用いられるにとどまる。


さい

  1. 〘 名詞 〙
  2. 魚「にごい(似鯉)」の異名。
    1. [初出の実例]「海老漉舎人は何処へぞ、さい漉舎人許行くぞかし」(出典:梁塵秘抄(1179頃)二)
  3. 魚「うぐい(鯎)」の異名。〔物類称呼(1775)〕

さい

  1. 〘 名詞 〙(けん)をするときに用いる語で、七を意味する。
    1. [初出の実例]「けんの手じなの手もたゆく。ろませさい。とうらい。さんな」(出典:浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)中)

さい

  1. 〘 名詞 〙 敷居。特に、室内の敷居をさしていう。
    1. [初出の実例]「座席出入の事。〈略〉又座に入時は、さいのきは一尺二寸のけて爪先をたつべし」(出典:三議一統大双紙(15C前)法量門)

さい

  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙 ( 「さよう」の変化した語 ) ぞんざいな語形で、「さいざんす」「さいです」「さいでございます」などの連語を作る。

さいさゐ

  1. 〘 名詞 〙 植物「やまゆり(山百合)」の異名。〔古事記(712)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「さい」の意味・わかりやすい解説

サイ
さい / 犀
rhinoceros

哺乳(ほにゅう)綱奇蹄(きてい)目サイ科に属する動物の総称。この科Rhinocerotidaeの仲間は、東南アジア、アフリカの森林、湿地、サバナに4属5種が分布している。いずれの種も、角(つの)を目的とした乱獲や密猟が原因で生息数が減少し、シロサイ以外は絶滅の心配がある。

[祖谷勝紀]

形態

種により大きさは異なるが、ゾウに次ぎカバと並ぶ大形の陸上動物である。体長は2~4メートル、体高は1~2メートル、体重は1~3トンで、雌は雄より小形である。皮膚は厚く堅い。色は灰色、褐色、黒褐色などで、模様はない。体表は、耳の先端と尾端に毛があるのみで、そのほかの部分はほとんど無毛であるが、スマトラサイ(とくに若いもの)には全身にまばらに毛が生じる。前後肢とも指は3本で、先端はひづめで覆われている。耳はじょうご形で大きく、前、横、後ろに自由に動かすことができる。目は、左右両側に外方を向いて位置しているため、広い範囲を見ることはできるが、距離感覚は乏しい。尾は60~76センチメートルで、先端に太い毛房があり、ハエなどを追うのに役だっている。上唇の形は種類によって異なるが、いずれも器用に動き、草や小枝を引きちぎるのに役だつ。歯は、植物をすりつぶすための臼歯(きゅうし)が発達しているが、門歯や犬歯の発達が悪く、ない個体もある。歯式は

で、合計24~34本ある。

 サイの最大の特徴である角は、位置も組成も、ほかの動物の角とはまったく異質のものである。たとえばウシやキリンの角は、中心に頭骨の一部が突出した骨質部がある。シカの角は、頭骨の一部の突起を基座として、骨質のものが毎年形成されるものである。これらに対し、サイの角は骨とは一体化していない。頭骨と角は結合組織で結ばれているが、どちらかといえば、皮膚から角が生えていると考えるのがよい。角は、表面も中心もすべて同質のもので、毛に類似したものが、成長方向にぎっしりと寄り集まった状態になっている。出生直後から伸び始め、生涯成長を続ける。雌雄ともにあり、種類により、2本のニカクサイ(二角犀)と1本しかないイッカクサイ(一角犀)とがある。1本の場合は鼻骨の上に、2本の場合は、2本目は前頭骨の上にあり、1本目より小形である。角は、仲間との闘争や他種の動物との争いに役だてる。物に激突して角が根元からとれてしまうこともあるが、その場合もふたたび角が伸びてくる。

[祖谷勝紀]

生態

シロサイ以外は群れをつくらず、単独か親子で生活する。日中は休息、睡眠し、夕方から朝までの間に活動する。シロサイは地面の草を主食とするが、そのほかの種類は樹葉がおもで、果実、草も食べる。大きな体と角を武器として備えているため、幼獣の場合以外は、敵となる動物は人間だけである。雄は尿を後方に飛ばして木などにかけ、縄張りの合図にすることもある。クロサイの走る速さは、時速45キロメートルの記録がある。4~7歳で性成熟する。妊娠期間は15~19か月と長い。普通は一度に1頭の子が生まれる。子はすぐに起立し、歩くことができる。3年ごとぐらいに出産するが、子は次の子が生まれるまで雌親と暮らす。寿命は40年ぐらいである。

[祖谷勝紀]

種類

(1)ジャワサイRhinoceros sondaicus かつてはインドからマレー半島にかけても分布していたが、21世紀初頭ではジャワ島の国立公園に50~60頭とベトナムの国立公園に10頭足らずが残っているにすぎない(2002)。これはサイの仲間ではもっとも少数である。インドサイによく似ているが小形で、体高約1.75メートル。角は1本である。

(2)インドサイR. unicornis インドからネパールにかけての湿地帯に2400頭がいる(2002)。体高1.7~1.9メートル、体重2トンを超える。角は1本で、長さ57センチメートルという記録がある。皮膚が厚くて堅いため、身動きできるように、ひだになった部分があり、中世の西洋の鎧(よろい)のようにみえる。このため本種には、イッカクサイのほか、ヨロイサイという別名もある。

(3)スマトラサイDicerorhinus sumatrensis ミャンマー、タイ、マレー半島、スマトラ島、ボルネオ島の水に近い丘陵地の密林にすむ。約300頭ぐらいが残っていると考えられる。体高約1.45メートル。角は2本である。

(4)シロサイCeratotherium simum アフリカの草原に分布し、北部と南部で別の亜種として区別されている。キタシロサイC. s. cottoniは、中央アフリカのコンゴ民主共和国(旧、ザイール)に分布するが、数は少ない。ミナミシロサイC. s. simumは、アフリカ南部に分布し、生息数も多く、絶滅の心配がもっとも少ないサイである。シロサイは、サイでは最大の種類で、体高1.85メートル、体重2.7トンにもなる。角は2本で、前角の最長記録は166センチメートル。10頭前後で群れをつくり、地上の草を主食としている。

(5)クロサイDiceros bicornis アフリカの東部から南部にかけて分布し、20世紀中ごろはサイのなかではもっとも生息数の多い種類であったが、密猟により激減し、20世紀末には約3000頭しかいなくなってしまった。体高1.4~1.7メートル。シロサイの上唇は横に広く平らになっているが、クロサイでは先が細くなって、木の枝を引き寄せて食べるのに都合よくなっている。

[祖谷勝紀]

飼育

最古の記録は、シロサイが紀元前1世紀にアレクサンドリアで飼われたというものである。前11年にはローマのアウグストゥス皇帝へインドからインドサイが贈られた。日本への初渡来は1921年(大正10)6月で、大阪の天王寺動物園へスマトラサイ1頭が到着し、4年近く飼育された。国内で多く飼育されるようになったのは第二次世界大戦後のことで、当初はクロサイが輸入されたが、1970年代以降はシロサイが多くなった。

[祖谷勝紀]

角と密猟

サイを絶滅に追いやっている最大の理由は、角をとるために行われている密猟である。サイの角は、昔から薬用および彫刻の材料として珍重されている。角の粉末は、解熱・催淫(さいいん)剤としての効力が信じられていた。古代中国などでは、角を材料として美しく彫刻を施したものが杯(さかずき)として使用された。20世紀後半にはアラブ地域で、短剣の柄(つか)にサイの角を使用することが流行しているために、多数の角が消費されている。サイは、希少動物の輸出入を規制した、いわゆるワシントン条約で対象種となっているため、日本でも1980年(昭和55)11月以降は輸入が禁止されている。

[祖谷勝紀]

『今泉吉典監修『世界の動物 分類と飼育4 奇蹄目・管歯目・ハイラックス目・海牛目』(1984・東京動物園協会)』『藤原英司著『死に絶える動物たち』(1990・JICC出版局)』『ナスカ・アイ編『いま、野生動物たちは――地球の声のネットワーク』(1995・丸善)』


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普及版 字通 「さい」の読み・字形・画数・意味

衣】さい

みの。宋・軾〔漁父、四首、二〕詩 漁うてふ 裏却つて歸路をぬ 輕舟短櫂、斜するに任す 後何れの處なるかを知らず

字通「」の項目を見る


衣】さい

すげみの。

字通「」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「さい」の意味・わかりやすい解説

サイ
Rhinocerotidae; rhinoceros

奇蹄目サイ科に属する動物の総称。ゾウに次ぐ大型の動物で,厚く硬い皮膚をもち,頭部に皮膚が角質化してできた角を1~2本もつ。草食性。多くの化石種が知られているが,現存する種はインドサイジャワサイ (以上イッカクサイ亜科) ,スマトラサイ (スマトラサイ亜科) ,シロサイ,クロサイ Diceros bicornis (以上ニカクサイ亜科) の5種のみである。いずれも個体数は少く,国際保護動物に指定されている。アフリカ,インドから東南アジア,ジャワ島,スマトラ島,ボルネオ島に分布する。

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