化学辞典 第2版 「臭化リン」の解説
臭化リン
シュウカリン
phosphorus bromide
リンと臭素の化合物.よく知られているのはPBr3とPBr5であるが,そのほかにP2Br4,PBr7も報告されている.【Ⅰ】三臭化リン(phosphorus tribromide):PBr3(270.69).四塩化炭素あるいはベンゼン中で,臭素と赤リンを反応させると得られる.気体では三方すい型分子.P-Br2.22 Å.∠Br-P-Br101.0°.空気中で発煙する刺激臭のある液体.融点-41.5 ℃,沸点173.2 ℃.密度2.85 g cm-3(15 ℃).乾燥状態では安定である.エーテル,ベンゼン,CHCl3,CS2などに可溶.水,エタノールにも溶けるが,加水分解して,ホスホン酸とHBrになる.孤電子対をもつため,Br3P・BBr3などの付加化合物をつくる.[CAS 7789-60-8]【Ⅱ】五臭化リン(phosphorus pentabromide):PBr5(430.49).二硫化炭素中でPBr3と Br2 とを反応させると得られる.固体は,[PBr4]+ と [Br]- からなるイオン結晶.P-Br2.13~2.17 Å.∠Br-P-Br108~110°.気体は,三方両すい型分子.固体は黄~赤色の斜方晶系結晶.100 ℃ 以下で分解しはじめ,PBr3と Br2 になる.CS2,CCl4に可溶.CH3CN溶液中では一部 [PBr4]+ と Br- に解離している.水では加水分解してリン酸とHBrになる.金属臭化物とはAuBr3・PBr5などの付加物をつくる.有機物の臭素化剤に用いられる.[CAS 7789-69-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報