日本大百科全書(ニッポニカ) 「付加化合物」の意味・わかりやすい解説
付加化合物
ふかかごうぶつ
addition compound
次の(1)~(3)のような化合物をいう。
(1)一つの化合物にほかの化合物が付加した形式で表すことのできる化合物。水和物、溶媒和物など。たとえば、Na2CO3・10H2O、CaCl2・8NH3、AlCl3・4C2H5OH、NH3・BF3、BF3・2H2Oなど塩類にH2O、NH3、C2H5OH、その他の分子が付加した化合物をいう。またクラスレイト化合物(包接化合物)など、結晶の骨格構造の中に分子が閉じ込められただけのものも含まれる。たとえば、8Kr・46H2O、6Br2・46H2Oなどがそうである。
(2)不飽和結合をもつ原子に対する付加反応によってできるものをいう。たとえば、エチレンに対する臭素の付加
H2C=CH2+Br2
→CH2Br-CH2Br
によってできる1,2-ジブロモエタンがそうである。有機化合物にその例が多い。
(3)このほか水素結合によって二量体となっているH2F2や(HCOOH)2などをはじめとして、原因がよくわかっていないものでも、各種分子が一定比で付加している化合物をいう。また、これらを分子化合物ともいっている。
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