化学辞典 第2版 「付加物」の解説
付加物
フカブツ
addition product
付加生成物ともいう.付加反応によって生成する化合物.2個(あるいは2個以上)の分子が直接結合してでき,生成に関与した分子中の原子がすべて含まれる.付加物はその生成の様式によっていくつかの種類に分類される.
(1)不飽和結合への付加反応によって生成するもの(addition product):たとえば,エチレン結合に対する臭素の付加,カルボニル基に対するシアン化水素の付加などによって生成する化合物がこれに含まれる.ディールス-アルダー反応の生成物も典型的な付加化合物である.
(2)非共有電子対をもつ原子への付加によって生成するもの(adduct):付加化合物(adduct compound)ともいう.窒素,リン,硫黄などの化合物に陽イオンが配位した付加化合物で,一般にオニウム化合物と総称される.このほか塩化アルミニウム,三フッ化ホウ素などのルイス酸が付加して生成する非電解質のオニウム化合物も知られている.包接化合物も付加化合物の一種である.
(3)このほか,分子化合物とよばれる,比較的弱い力で付加したもので,容易にもとの成分に解離する化合物がある.水素結合による付加物,電荷移動錯体などが重要である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報