日本大百科全書(ニッポニカ) 「舟越間道」の意味・わかりやすい解説
舟越間道
ふなこしかんどう
名物裂(ぎれ)の一つ。縞柄(しまがら)や色調の異なるもの数種があるが、一般に細縦縞に真田(さなだ)の横筋が入っているのが特徴。『雅遊漫録』に「茶色花色浅葱(あさぎ)入まぜの立嶋(たてじま)尤(もっと)も織分なり、必(かならず)織留の横筋あり」、『古今名物類聚(るいじゅう)』に「織とめ大真田ありて二寸計(ばかり)藍地(あいじ)なり」と記されている。
前田家旧蔵の舟越には3種ある。(1)は白茶・樺(かば)・黄・浅葱・紅・縹(はなだ)・焦げ茶の細縦縞に真田の横筋があり、縹の縞筋に経糸(たていと)を染め分けずに結びつないで絣(かすり)風に織り出した部分に、平金糸で竜の丸文と菱形(ひしがた)の小花文を織り出したもの。(2)は紺・黄・白の細縦縞に、黄・縹・白の横段が入り、色変わりの境に真田の横筋のあるもの。(3)は花色・白・黄・えび茶色の細縦縞に縹と平金糸の真田の横筋があるもの。とくに金糸の入った(3)の手を舟越の上手(じょうて)として本歌(ほんか)舟越ともいう。名称の由来は、豊臣(とよとみ)秀吉配下の武将で、織部・遠州に茶を学んだ舟越五郎左衛門景直の所持したものと伝えられるところにある。
[小笠原小枝]