金糸(読み)きんし

精選版 日本国語大辞典 「金糸」の意味・読み・例文・類語

きん‐し【金糸】

〘名〙
金色の糸。薄紙金箔(きんぱく)を置いて細く切ったものや縒(よ)ったもの、銀・銅の針金に金着(きんきせ)したもの、絹糸・綿糸・レーヨン糸などの芯に金の切箔を縒りつけたものなど。金襴(きんらん)織物、刺繍(ししゅう)、縫い取りなど種々の装飾に用いられる。金紗(きんしゃ)。金(きん)
※菅家文草(900頃)六・賦新煙催柳色「翠黛開眉纔画出、金絲結繭未繰将
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「襦袢の半襟も黒縮緬に金糸(キンシ)で」
漆芸の一種。堆朱(ついしゅ)に類似するが、深い彫り目に朱漆と黒漆の重なりによる筋が多く見える。〔君台観左右帳記(1511)〕
③ 沈香木の外観での分類名称。縦断面に樹脂分が①のように輝いて見えるもの。特に上質の新伽羅に見受ける。

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デジタル大辞泉 「金糸」の意味・読み・例文・類語

きん‐し【金糸】

金色の糸。
金箔きんぱく和紙にはりつけ細く切ってったり、金箔を細く切って絹糸などの周囲に縒りつけたりしたもの。金襴きんらんなどの織物や刺繍ししゅうなどの装飾用とする。
堆朱ついしゅの一。黄色と赤色の漆を塗り重ねて、彫り目にいく筋もの線を表した漆器
金めっきをした細い金属線。

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改訂新版 世界大百科事典 「金糸」の意味・わかりやすい解説

金糸 (きんし)

金を用いた糸の総称切金(きりかね)をそのまま糸として用いるものと,〈箔糸はくいと)〉としたものとがある。前者はヨーロッパ,西アジア地方でもっぱら用いられるいわゆるメタル・ヤーンで,細断した切金をそのまま,あるいは絹糸などに巻きつけて用いるもの。後者は中国およびその影響を受けた朝鮮,日本で用いられるもので,丈夫な紙に漆や膠などで金箔を貼りつけ,これを細断して平金糸(ひらきんし)(平箔糸)として用いたり,絹糸に巻きつけて撚金糸(よりきんし)として用いたりする。金糸を織り込んだ織物の歴史はきわめて古く,西方では既にローマ時代に存在したといわれる。中国でもおそらく西アジアの影響を受けて金糸を織物に用いることが行われ,織物になじみやすい箔糸が案出されたものと思われる。箔糸が中国においていつごろ造られたかは明らかでないが,正倉院伝世の綴(つづれ)に平箔糸を織り込んだものがあること,出土例ではトゥルファンの張雄夫婦墓(7世紀)出土の女子木俑が着けている細い綴の帯の一部にも平箔糸が織り込まれていることなどから,初唐には箔糸が存在していたことが知られる。金糸は織物に豪華な雰囲気を与えることから錦や唐織,綴などの高価な絹織物にはしばしば織り入れられるが,特に箔糸のみを絵緯(えぬき)(紋緯(もんぬき))として用い,文様をあらわしたものを金襴という。
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普及版 字通 「金糸」の読み・字形・画数・意味

【金糸】きんし

黄金の糸。〔杜陽雑編、下〕同昌~七寶の輦(ほれん)に乘る。~其の上に仍(な)ほ絡するに眞珠玳瑁(たいまい)を以てし、金絲をと爲す。

字通「金」の項目を見る

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